2026年2月10日火曜日

給付付き税額控除に注目するべき

 昨日のブログで触れなかった高市政権の政策について補足しておきたい。

それは「給付付き税額控除」についてである。これは税に関する大きな方針変更になるので、総理は検討に2年かかるとしており、そのつなぎとして「2年間の食料品消費税をゼロにする」としている。ところが、報道で取り上げられたのは消費税減税ばかりで、「給付付き税額控除」については殆どコメントされていない。

私は総理の掲げた給付付き税額控除に賛成である。しかし、これは影響も大きく、検討に2年かかるというのも理解できる。消費税減税はつなぎの政策であり、私はそれほど重きを置いていない。

AIの急速な普及により、今後ホワイトカラーの仕事が大幅に減少することは間違いないだろう。現在の中間層であるホワイトカラーはAIを使いこなす富裕層の仲間入りをするか、AIに仕事を奪われて貧困層に没落するかのどちらかになる可能性が高い。結果として一部の富裕層と、貧困層の増加という経済的豊かさの分離が起こると思う。日本の中道党や米国の民主党などは中間層を維持すると言っているが、貧困層を放置して中間層を補助することは政策としては現実的ではなく、貧困層対策を強化することのほうが現実的だと思う。私は「給付付き税額控除」は貧困層対策として極めて有力だと考えている。

国民としては本丸の「給付付き税額控除」こそが重要で、総理の真意や実現性を問うべきである。しかし、総理がつなぎの政策と言っているにもかかわらず、メディアは消費税減税ばかりを取り上げ「給付付き税額控除」に関してはほとんど触れられていない。この分野に詳しいはずの日経新聞ですらそうなのだから、この国のメディアはいったいどうなっているのかと思ってしまう。


2026年2月9日月曜日

今回の選挙は日本の政治の転換点となるか

 昨日の選挙は自民党の大勝に終わった。

昨日は雪の中、私はいつものスニーカーでは歩けないと思い登山靴を引っ張り出して投票所まで歩いて行った。投票所はすいていたが、前回よりも投票率は高かったそうだ。

結果は予想通り中道の大敗に終わった。但し、私はここまでひどく中道が負けるとは思っていなかったし、自民党も、単独過半数程度だろうと思っていた。それが、自民党単独で3分の2に達して、中道は改選前の3分の1以下という大差だった。現在は自民1強に対してその他の政党がいくつか、という構図で、これがいつまで続くか、という問題になるだろう。

今回の選挙は、第2党であった立憲民主党が消滅した選挙と言えると思う。そしてこれは新しい政界再編の始まりになるかもしれないと私は思っている。これまでの立憲民主党は、自民党対社会党という対立の構図を引き継いで、資本主義対社会主義という基本構図対決の匂いがあった。世界では20世紀中に社会主義は経済原理としては成り立たないということが証明済であるにも関わらず、旧立憲民主には社会主義の発想から抜け切れない印象の国会議員が少なからずいた。今回の選挙でその人たちは国会を去るか、残っていても資本主義の中で日本がどう生き残るかを考えざるを得ず、米国や英国のような2大政党制になる下地ができたと思う。

自民党の中にも高市総理に不満を持つ人たちは少なからずいるので、自民党の中から一部が分離して、その他の政党を集めるような政界再編が3年以内くらいで起こるような気がしている。問題は、その新党の自民党との対立軸をどうするか、様々な意見の人たちを糾合する中心人物になりそうな人がいるか、である。私は今の野党には求心力を持つような人物はいないと思っている。もし出てくるとすれば、小池東京都知事か、あるいは現時点ではそれほど知名度の高くない人ではないかと思う。林芳正氏や小泉進次郎氏は自民党から外には出ないだろうと思う。

第2次高市内閣がどうなるかについても、言及しておこう。選挙で大勝したので、当面高市氏のやりたい方向に動くことは間違いない。積極財政を掲げているので当面の景気が良くなることは間違いなく、現に株価は大幅に上昇している。これから始まる春闘についても、大幅賃上げなどの景気の良いニュースがどんどん出てくるだろう。ただしこれはマスコミは珍しいものを取り上げるという特質によるもので、賃上げが少ない企業のことは報道されないので、一般人は賃上げ率か高いような錯覚を起こすことによるものだと思う。年後半に出てくる平均の賃金上昇が物価上昇を上回る「実質賃金上昇」となるかどうかは微妙で、私は難しいのではないかと思っている。

前回も書いたように、高市氏の積極財政が日本の競争力向上にはつながらないと私は考えているので、2年もすると行き詰まりが明らかになってくると思う。通貨供給量を増やせば通貨安になる、通貨安になると価格競争力が上がり、輸出は増える、という構図はあるが、通貨安による輸出増加は、政治的な摩擦を生むので継続は難しいと思う。好調に上がり続けている自分の保有株をどこで売却するか、私にとっても難しい判断になると思っている。

2026年1月16日金曜日

日本は経済的武器を持つべき

 高市総理が通常国会の初めに衆議院の解散を決断した。私の予想よりも早かったが、いずれ解散総選挙になるとは思っていた。多くの人が自民党が議席を増やし、立憲民主党が大きく議席を減らすと思ったようで、解散の報道以来、日経平均の株価は大幅に上昇している。立憲民主党は公明党との統合を検討しているが、仮に統合したとしても、統合後の議席数が現在の立憲民主単独の議席数まで行けばよいほうだと思うし、遠からずまた喧嘩別れすると思う。自民党が単独過半数に達するかどうかは分からないが、議席を増やすことは間違いないだろう。つまり、株式市場が予測しているように安定した第2次高市政権が誕生するのは確実だと思う。

安定した高市政権が日本にとって良いかどうかは全く別問題である。政府支出を増やし、インフレ政策を取るので、見た目でGDPが増えて景気が良くなるように見えるが、円安が進み、ドルベースでのGDPは伸びないだろうと思う。ここ数年の円安で海外からのインバウンド旅行者は大幅に増えたが、輸出はわずかしか増えていない。これは日本製の製品の競争力がじり貧を続けている証しだと思う。私のように資産の大半が投資で預金は少ない人にとっては良いのだが、多くの人は物価高に苦しむだろうと思う。高市政権は物価高対策として、物価の上昇を抑える政策ではなく、困っている人にお金を配る政策を取っているので物価の上昇は止まらないだろう。

高市総理の経済政策の目玉は経済安全保障で、17の戦略分野を列挙しているが、どうも他国に意地悪をされても困らない体制を作ることが目標に見える。しかし、日本はエネルギーも食料も自給できるレベルにないので、自給体制を作ることは本質的に無理である。それよりも、経済安全保障の観点でいえば武器を持つことが重要だと私は考えている。ここでいう武器とは日本が供給を止めると世界の主要国経済に大きな痛手を与えるものである。例えば中国のレアアース、韓国のメモリ、台湾の半導体製造である。これに対して日本は明確な武器を持っていないように思える。トヨタの自動車は世界シェアトップであるが、トヨタが自動車の供給を止めたとしても世界が困るようには思えない。

現在の日本に必要なのはまず、一つでよいから武器と呼べる経済分野を作ることだと思う。武器となる分野はまず一つ確立することが重要で、17分野もの戦略分野を決めることは武器と言えるレベルまで育てる気が無いことを示しているように私は感じている。また、今決められている17の戦略分野の中に武器と呼べるレベルまで育つ分野があるのかも疑問である。本気で武器となる分野を検討しれば違った分野が見つかるような気がしている。また、以前書いたのだが、日本企業の競争力が低下している本質的原因は投資の不足にあるのではなく、変化を嫌う日本の文化にあると私は思っているので、仮に投資に成功したとしても日本経済全体の底上げにまで至るのは難しいと思っている。文化を変えるという議論は始まってすらいない気がする。

前回のブログで私は「高市総理の外交に期待する」と書いたがこれはどうも難しいと今は感じている。これは高市総理の外交能力が私の期待に沿っていない、ということでは無く、トランプ政権に対する適切な対応が非常に難しく、高市総理の間は日本はアメリカの子分という見方から抜け出せないのも仕方がないと思うようになった、ということである。ベネズエラ問題に見るような米国トランプ政権の軍事力行使に対しても、高市総理も何も発言できていない。安倍晋三元総理なら何かうまい言い方をしたように思うが、現在ではこの人ならうまくやるだろうという人も私には思い浮かばない。

2025年10月26日日曜日

高市総理に何を期待するか

 自民党総裁選挙に続いて総理大臣指名選挙が行われ、高市早苗氏が総理大臣になった。少数与党で、公明党から維新の会へと組み換えがあったので今後の運営も容易ではないだろうが、現時点での支持率高いようである。ここでは高市総理に何を期待できるかについての私なりの見方を述べてみたい。

総理大臣に重要な資質として私はビジョンと実行力があると思っている。高市氏はビジョンはあまり得意ではないが実行力は高い人だと思っている。菅義偉元総理と似たタイプの人だと思う。それでビジョンは安倍晋三元総理のものを借用して、安倍氏が実現できなかったことを実現しようとしているように思う。

所信表明演説では日本の経済力の強化を中心に語っていたと思うが、この点に関してはあまり期待していない。高市氏はアベノミクスを継承するといっている。アベノミクスは3本の矢、第1の矢である金融緩和、第2の矢である財政出動、第3の矢である成長戦略からなっている。私は安倍政権の最初の3年は第1の矢と第2の矢の効果で日本経済を上向かせたが、第3の矢の具体策が乏しかったので後半の3年は息切れしたと思っている。そして高市氏も同様で第3の矢の具体的な持っていないと思う。高市氏もそれを認識していると見えて「日本成長戦略会議」を立ち上げるといっている。しかしそこで強調されているのは危機管理投資であり、これはいわば保険である。成長力の低い企業が保険を強化したとしてもそれで成長できるとは思えない。株式市場はいわゆる高市トレードで上昇しているが、私が国力の本質であると考えている国際競争力の強化にはつながらないので、たとえ一時的に政府支出で好景気になったとしても長続きはしないと思っている。

高市氏の外交能力はまだ分かっていないが、私は高市外交に関しては期待している。それは日本が真の独立国に近付くことである。現在の日本は世界政治の中でいうと、米国派閥の一員で派閥の長である米国に対してあまりものが言えない国だと思われていると思う。しかし、Gゼロの時代になって、米国が、派閥メンバーを保護はしないがいうことはきかせたい、という態度になっている。そこで米国の言うことを聞きながら、徐々に米国からの距離を取り、自分の立場を主張できる国にしていく、というのが日本の政治的観点から進むべき方法性だと思う。

これは安倍元総理の構想だと思う。高市氏は安倍氏に比べてビジョン面で劣るので、個人として世界の首脳から安倍氏よりも高い評価を得ることは至難であると思うが、安倍氏の考えを受け継ぐので安心感はある。その一方で米国が世界から嫌われるようになってきているのは日本が独立を目指すうえでは大きなメリットである。結果として、日本の存在感は上がると期待している。

現実的には、維新との約束がうまくいかずに来年中ごろに解散総選挙になる可能性が高いと思っている。その時に大負けするのは自民ではなく、立憲民主党で、その議席がどの党に移るのかに注目したい。



2025年6月12日木曜日

日本学術会議のあり方について

 国会で日本学術会議の在り方の見直しが承認され、政府直営から独立行政法人に変更になった。政府が活動費を支給する代わりに、評価、監査は内閣府が任命した第3者機関が行うという。これをもって政府の介入を危惧する人もいるが、まずは学術会議が何をするか、第3者機関がどう評価するかを見守りたいと思う。全体としては良い方向への評価だと思う。

言うまでもなく、今回の変更のきっかけは菅義偉元総理がこれまでは認めてきた学術会議メンバーの推薦に対して拒否権を発動した点にある。結果として学術会議の在り方の見直しと、菅氏辞任の理由の一つになったと思う。

日本学術会議は元々は日本の科学技術の在り方について著名な学者が集まって政府に対して提言を行う機関だったが、次第に人文系の学者の発言が強くなり、内容が変質してきた印象を私は持っていた。特に「戦争反対」を金科玉条のように唱えて現実離れしてきた印象を私は持っている。戦争賛成を唱える人は居ない。その一方でプーチン大統領のように隣国に侵略戦争を仕掛ける人物が世界で存在感を持っておりこれを世界は止めることができていない。これを止めるには「戦争反対」を声高に叫ぶだけでは解決しないのは明らかである。しかし、学術会議は現実的な解を探るのではなく、今でも自衛隊不要論を唱えているような印象を私は持っていた。

菅義偉元総理が何人かの学術会議メンバーの任命承認拒否を行ったのは心情的には私にも理解できる。しかし、承認拒否の理由を問われて「人事の問題だから」と回答したことに私は強い不満を持っている。マスコミも野党も「人事の問題には理由を説明せずに恣意的に決定してよいのか」という突っ込みを入れていない。ここに私はこれまで述べてきた「日本経済の凋落が止まらない」の原因を見ている。つまり、「人事の問題は微妙な問題なので説明しなくてよい」という暗黙の社会の認識を感じている。こういった態度が日本のイノベーションの強化を阻んでいると思う。

今後の学術会議がうまくいくかどうかも、第3者機関と学術会議のやり取りが、説明責任をもって行われるか、暗黙の圧力で行われるかといった点が鍵になると思う。

政府が日本学術会議に不満を持ったからかどうかは分からないが、日本学術会議の機能は総合科学技術会議と重なっているように見え、最近は総合科学技術会議のほうが重視される方向に見える。どちらも学会の重鎮が仕切っているはずなので、統合の話などが学者側から出ても良いと思うが、果たしてどうなるか、今後の推移を見守りたい。

2025年6月6日金曜日

日本経済の凋落が止まらない (8)現実的な対応は

 日本経済の凋落が加速すると言っても、急に不景気になるとは思っていない。2022,23年の円安で日本の競争力は高まっているので、その余力で今後2-3年は現在とあまり変わらない状況が続くと思う。その後はスタグフレーションになると思うが、その状況にどう対応するかでその後の日本の状況は大きく変わると思う。いずれにせよ日本全体にかかわること、状況認識として重要であるが、国全体の動きはブログに書いたくらいでどうにかなるとは思えないので、以下には個別企業の対応について考察する。

個別企業の対応はシンプルである。自分の会社がイノベーションに強くなればよい。国内を主な活動の場とする企業にとっては周囲のイノベーション力が低いので、トップが舵を切れば比較的容易にイノベーションに強い企業になれると思っている。世界と戦っているトヨタや日立などは苦戦すると思うが、既に必死で取り組んでおり、私がコメントする必要もないと思う。

イノベーション力を高めるのに重要なことは多岐にわたるが、最も重要なのは個別の施策よりも企業風土だと思う。社員全体がイノベーション力の強化に向かっている企業は強くなるはずだと思う。実際そのような企業のあるようである。企業風土に最も影響の大きいのは人事政策だと思う。イノベーションを起こす力のある人が昇進するような仕組みが不可欠だと思う。

日本企業は長年続けてきた年功序列の昇進方式から離れようとしている。多くはジョブ型と呼ばれる業績評価に向かっているが、私は重要なことは各社員をきちんと評価してそれを伝えることだと思っている。その評価基準としてこれまでは年齢が大きな要素だったわけだが、それを年齢から売り上げなどの計測が容易な指標に切り替えるのではだめだと思っている。研究者なら特許件数とか、論文件数とかがこの種の指標になるわけだが、実際の活動内容を分析して評価すれば異なった評価が出てくることが少なくない。私の経験では個人の人事評価を複数の人物が議論して評価を決めれば評価ミスは少ないと思う。

日本人は相手にとってマイナスになることを伝えることに強い抵抗感を持つ人が多い。就職の不採用とか降格とかをできるだけ口頭で伝えることをせずに相手の見えないところで伝えようとする。このマインドが良くないと私は思っている。相手にとって良くないことでもどこが良くないかを指摘して納得させる能力が重要だと思っている。日本企業では降格は極めて少ないが、一部には降格をそれほど例外的なことではない状態の企業もある。それで降格にされた人が不貞腐れるのではなく、試合に負けたような受け止めで、「次は能力を高めて頑張るぞ」と思うような企業は強くなる。降格の多い企業は抜擢も多くなる。良い企業風土とはこういったものだと思う。鍵は人事評価を説明責任をもって行うことで、私はこれを公務員に対してぜひ導入してほしいものだと思っている。

ここまで書いてきた一連の「日本経済の凋落は止まらない」というブログはここでいったん打ち止めにしようと思う。今回は経済に焦点を当てて考察したが、経済は国家の一部の指標でしかなく、本来は「どのような国が良い国か」という哲学が重要だと思う。一部の支配層にとって都合の良い哲学ではなく、国民全体が生き生きと活動できる国にするには何が重要か、私自身の中でもまだもやもやしている。

2025年6月4日水曜日

日本経済の凋落が止まらない (7)今後10年間日本経済の凋落は加速する

 今回のテーマが私がこの一連のブログを書き始めた動機である。

今後10年間、私は日本経済の凋落(国際競争力の低下)は下げ止まるどころかむしろ加速するだろうと思っている。その理由はAIの社会への広範囲な浸透である。AIが今後社会の至る所で利用され、急速に普及することはほぼ疑いない。日本はAI導入に送れるだろうが、それだけではなく、AIの影響も日本にマイナスに働くと思う。AIは主にホワイトカラーの仕事を奪う。ホワイトカラーの5分の1程度はAIを利用する側に回りより豊かになるが、5分の4は職種転換を余儀なくされるだろうと予測している。

既に述べたように日本ではブルーカラーが強く、ホワイトカラーは弱い。ブルーカラーの仕事を広範囲に置き換えるにはロボットが必要なのでまだ数十年先になると思っている。日本の強いブルーカラーへの影響が少ないのならむしろ日本にとって都合が良いのではないかと考えるかもしれないが、むしろ逆だと思っている。その理由は給与水準がホワイトカラーのほうがブルーカラーよりも高いからである。

給与水準の高いホワイトカラーの需要が国全体として下がる。さらにデジタル赤字で外国企業のシェアが上がるので多くの日本企業のホワイトカラーは接客や肉体を使う仕事のようなAIが入りにくい職種への転換を余儀なくされるだろう。このようなAI化の進みにくい職種の付加価値を高めて給与水準を高めることが急務である。それができない企業は競争力が下がるし、国全体では社会不安につながるおそれがある。

現在日本ではリスキリングが注目されているが、言葉からして欧米で作られた概念であることは疑いない。現在のリスキリングはAI活用といった方向を目指しているように思うが、AI活用の人材は需要が小さいので、全ての人がそちらに向かうことはできない。AI活用に転ずることができない人が大量に発生することを前提にリスキリングプログラムを考えるべきだと思う。

AI導入が10年で終わるとは思わないが、10年も経つと導入は一巡し、社会の対応力も付いてくるので、AIの影響は下がってくると思う。AI失業はピークを打ち減少に転じると思う。それからが日本経済が底打ちするチャンスだと思う。AIのブルーカラーの仕事への浸透はゆっくりとしか進まないし、日本企業のイノベーション力も向上に向かう時期だと思う。但し、これは今から日本全体でイノベーション力の向上に取り組み始めたという前提の上である。

私の予想通りに社会が進むとすれば国全体で様々な問題が生じると思うが、私が特に気にしているのは年金予算の枯渇である。増税をしない限り年金を減らすことはやむを得ないことになるだろう。10年後には私は84歳、余命はそれほど長くないので年金を減らされても何とかなると思うが、問題は就職氷河期世代である。彼らが年金を受け取る時期になっており、ここでも彼らは不遇となる。この対策は不可欠だと思う。結局、この対策には増税しかないだろう。増税できる手段としては分離課税になっている投資による所得を給与所得などとして合算する総合課税化しかないのではないかと思っている。いろいろ批判されているマイナンバーカードはそのための手段だと思っている。

2025年6月3日火曜日

日本経済の凋落が止まらない (6)日本のイノベーション力を底上げできるか?

 今回は前回の「2.日本がイノベーションに強くなる」について考えてみる。

結論を先に言うと日本のイノベーション強化は非常に難しいと思う。私は現在の日本のイノベーション力は弱いと思っているが、20年ほどかけてイノベーション力で弱くない、つまり普通の国になれば成功だというくらいに思っている。その理由は日本社会の至る所にイノベーション(変化)を嫌う文化が根付いていると思うからである。

以前も書いたが、日本の刑事ドラマなどで地域再開発がテーマになるとほぼ必ず再開発派が金儲けをしようとする悪い人で、反対派が貧しいが善良な人たちということになっている。料理がテーマの場合には新しい味を求める人が悪者で、昔ながらの味を守る人が善人ということになっている。「従来のやりかたを変えるのは悪いこと」という刷り込みがなされている。

明治以来、日本政府は「欧米に追い付け、追い越せ」を合言葉に、知識と理解力があって、協調性が高く、上司の命令に忠実な人材育成を行う教育体系を整備した。結果として優秀なブルーカラーが大量に育成され、日本が工業大国になることに大きく貢献した。しかし、イノベーションが重要となるとこの方針がマイナスに作用する面がある。イノベーションは現在のやり方に疑問を持つところから始まる。現在の教育はこの疑問を抑圧する傾向があると思う。最近の教育現場では知識だけでは不十分で思考力を養わないといって、動いている。良い方向に動いていると思うが、「学校の今のやり方に疑問を持ち、それを発現する」といったことを奨励するべきだと思う。

政府では毎日何十という検討会議が行われている。各会議は多くてもひと月に1回だから検討会の数は千を超えるだろう。利害関係者と学識経験者を集めて、どうすればよいかを議論する場だが、多くの場合シナリオは事務局である官僚と業界の有力者とで決められており、本質的な議論にはならない。無理なくシナリオ通りに結論を導く官僚が優秀とされる。官僚が業界と結びついているのはお互いにメリットが大きいからである。ライドシェアの日本導入に関する議論などはその典型である。イノベーションはベンチャー企業によって提案されることが多い。ベンチャー企業が事業を拡大しようとするとこのような政府の体制によって阻まれることが多い。

現在の日本の文化や習慣は殆どが江戸時代に確立されている。そして、徳川政府が日本にイノベーションを嫌う文化を根付かせたのだと私は考えている。徳川家康が天下を取った時にその権力基盤はまだ盤石なものではなかった。自分の権力基盤を盤石なものとするために様々な手を打った。基本的には上司に逆らわないように国民をマインドコントロールする方針だと私は考える。決まりに関してはその正当性を疑わず、従うことが重要である、内部の争いを避けるため長男よりも次男のほうが優秀でも長男を跡継ぎにして、皆で長男を盛り立てるべし、等がその典型である。

明治維新を起こした立役者は多くがこの徳川政府の考えに疑問を持った人たちだろうと想像している。しかし明治政府はこの徳川文化を温存した。自分が権力者の立場に立つと、反発するものを抑えるような文化が好ましいと考えたのだろうと私は想像している。ちなみに、江戸文化は日本人の本来的なものでは無いと私は考えている。少なくとも戦国時代は変化を起こして成功することが高く評価されていたし、それ以前には特に変化は良いとか悪いとかいう意識は強くなかったのだろうと思っている。

以上のような国全体を覆う意識を変えるには大変なエネルギーが必要だということは容易に想像できるだろう。いずれも最近、イノベーションが重要になってきて見直しは行われている。しかし、抵抗勢力も多く、変化は遅々として進まない。実際に変化が起きて効果が確認できるレベルになるまでに少なくとも20年はかかるだろうというのが私の推測である。


2025年6月2日月曜日

日本経済の凋落が止まらない (5)産業成功のカギを製造に戻せるか?

 現在、成功のカギがイノベーションに移り、凋落している日本経済を復活させるにはどうすればよいか?

1.成功のカギを日本の強みである製造に戻す
2.日本がイノベーションに強くなる
3.成功のカギをイノベーション以外の日本の強みに移す

の3通りしかないだろう。このうち3に関しては私はアイデアを持っていないのでこのブログでは取り扱わない。今回は1.に関して考えてみる。

結論を先に言うと1.は非常に難しくほぼ不可能に近いと私は考えている。

まず、日本が世界の産業構造に働きかけるには、市場に影響力を発揮することが必要だが、日本の市場規模は世界であまり大きくなく、日本の市場を変えたとしても世界から孤立するだけだという点がある。

それに加えて世界の産業の成功のカギはこの30年ほどで製造からイノベーションに移ってきた。これは世界で最大規模の米国市場が動いた点が大きいが、イノベーションといっても、新機軸を打ち出せば良いということではなく、その新機軸が一定規模以上の利用者にとって有効であると受け入れられて、産業として成立し、それが更なる投資を呼び込んで普遍化して汎用性を持つようになる、というサイクルが回らなくてはならない。私の実感としてはこのイノベーション重視の方向性は加速していると思う。

その大きな要因は半導体技術の急速な改善である。半導体の性能と低消費電力化が急速に進むことによりプロセッサの性能が大きく向上し、多くの仕事がプロセッサで実現できるようになった。つまり付加価値がハードウェアからソフトウェアに移動して、新しいアイデアを試してみてうまくいかなければすぐ次のアイデアを試す、ということが可能になっている点が大きいと思う。

日本企業のソフトウェア開発力は低いと断定できると思う。ハードウェアの分野では、衰えたとはいえ日本製品でシェアが世界1というものはたくさんある。しかし、ソフトウェアでシェアが世界1というものは一つもないと思う(日本市場の規模が世界1のものを除いて)。日本企業でソフトウェアに強い会社というと、NTTデータ、富士通、NECなどが考えられ、最近は企業向けのDXソルーションで好景気であるが、顧客は殆どが日本企業で世界では存在感を示せていない。開発手法に関しても、要求仕様を柔軟に変えられるアジャイル開発が世界では主流になりつつあるが、アジャイルでは仕様策定者とソフトウェア開発者が一体となって作業をすることが必要なので開発を外注している日本では導入が遅れていると思う。

日本の強みであるトヨタ式生産方式はソフトウェア開発には使えない。カイゼンは同じ作業を繰り返す中で常に工夫して作業効率を上げていく方法であるが、ソフトウェアは製造ほぼノーコストでできて、必要なのは開発だけである。開発では同じ作業を繰り返すことはなく、よほどうまく工夫しないとカイゼンの手法を使うことはできない。

半導体の急速な性能向上はいつまで続くのだろうか? これまで半導体の性能向上はムーアの法則による製造工程の微細化によっていた。製造工程の微細化は限界に近付いており、微細化のペースは遅くなっている。最近は3次元チップなどの方向に動き始めているので微細化は限界に近いといえるだろう。しかし、現状で最先端の2nmプロセスの工場は建設費が非常に高価で世界でも数か所しかない。このような現状の最先端の製造技術の安定化や低価格化は今後も進むだろうから今後10年くらいは半導体の全体としての高性能化は進むと思う。

結論として少なくとも今後10年くらいはイノベーション重視の産業構造は続くだろうし、付加価値のソフトウェア化も進むと思う。

2025年6月1日日曜日

日本経済の凋落が止まらない (4)敗戦からの奇跡の復興を遂げた日本の強み

 ここからは日本経済の凋落を止めるための対策について考えていきたい。

対策の第一歩は日本の強みを明確に認識することである。米国は「米国の強みはイノベーション力にある」と喝破して現在の強みに達した。敗戦の焼け野原から30年程度で世界トップをうかがえるレベルまで上り詰めたのは日本にどんな強みがあったからだろうか?

私は製造業の強みにあると思う。製造業には商品企画、開発、製造、流通、保守というプロセスがある。そして事業の成功を担う大きな要因には他に営業がある。これらの中で日本企業が特に強いのは製造だと思う。

70年代、80年代に家電や自動車で日本がシェアをどんどん伸ばしていった時期には、新製品のリリースペースが欧米の企業よりも圧倒的に早かったということがあったので開発が強みだという人もいるだろう。今でも、低消費電力化といった数値競争の新製品開発では日本企業は強いと言えると思う。但し、現在ではこの分野には中国という強敵がいる。イノベーティブな製品を出すには、マーケティング、商品企画、開発という全体が必要になるが日本企業は全体としてマーケティングが弱く、この意味での開発は強いとは言えないと思う。

製造の分野では間違いなく強いと思う。トヨタ式生産方式は世界に誇れる日本のシステムである。トヨタのOBは様々な企業にトヨタ式を教えているが、トヨタのようにカイゼンを企業文化にまで持ち上げるのは容易ではなく、簡単に追い抜かれることは無いだろう。トヨタでなくても日本企業の製造力は全体として高いと言えると思う。人材の観点からいうと日本企業の強みはブルーカラーにありホワイトカラーは強いとは言えないと思っている。

日本の製造業が強くなったのは明治維新以来の文明開化、富国強兵政策が結実したものだと思っている。明治維新でできた新政府は、江戸時代の鎖国で世界にいい気く出遅れたことを悟り、「これからは工業化の時代が来る」と考えて初等教育から高等教育、産業政策などの政策全体を日本が工業大国になる方向に舵を切った。20世紀に入るころには日本はアジアでは突出した工業国になっていた。増長した日本軍が戦争に突き進み敗戦国となったわけだが、戦後短期間に復興できたのはそれまでの50年以上の日本の政策による日本社会の工業化ポテンシャルの高まりがあったと思っている。

しかし、バブル崩壊後日本経済が低迷しているのは、産業の成功のカギがイノベーションに移り、日本がイノベーションに強くないことを意味していると思う。次回はこの点について掘り下げてみたい。

2025年5月31日土曜日

日本経済の凋落が止まらない (3)欧州の動き EU統合

 米国がイノベーションに向けて動き始めたころ、欧州では別の方向に向けて大きく動き出した。EU統合である。彼らは欧州経済を統合して米国と対抗できるレベルの市場規模を作り出すことを目標とし、共通通貨ユーロを導入した。

米国は合衆国であり、異なった地域がそれぞれ州として国に組み込まれるという経験を持っているが、米国建国初期でまだそれぞれの体制も完備していなかったので比較的容易に統合が進んだと考えられるが、欧州の場合にはそれぞれ独立国として確立していたので統合の議論は容易ではなく、ゆっくりと進行しており、現在でも進行中である。

統合の議論の過程で、欧州は完全には合意に至らなくても、納得して合意文書を作成し、ゆっくりとでも前に進むという多数団体の合意形成というノウハウを獲得した。このノウハウが生かされた産業分野が携帯電話である。携帯電話の初期には国別に異なった方式を採用していたが、まず欧州で統一システムGSMを確立し、それを更に世界統一システムに拡張してUMTSを作成した。携帯電話の分野では欧州勢が大きな存在感を持った。この経験を生かして様々な分野の国際標準化で欧州勢は大きな存在感をもって現在に至っている。

イノベーションと合意形成、あるいは半導体と携帯電話では産業全体の対する影響の広がり度合いが違う。市場も統一に向かってはいるがまだまだ単一国家と比べれはばらばらである。それで欧州の産業は米国ほどには強くならなかったのだと私は思っている。それに加えて英国のEU離脱が欧州統合に対して水を差した。今では英国のEU離脱は失敗であったという評価が定まっていると思う。一部のポピュリストの英国の政治家に英国民が踊らされたのがその理由だと思う。今でも反EUを唱える政治勢力が増加している国はあるが、EU離脱という話は出ていないという。

トランプ政権の誕生で米国は敵にも味方にもなり得る第3者 、という認識が欧州には広がっている。ユーラシアグループの言うG0の時代への対応を欧州は遠からず本格的に打ち出してくると私は思っている。

なお、トランプ政権の製造業米国回帰の本気度について補足しておきたい。メキシコ国境の壁建設と同様に着手はする、現にすでに着手している。しかし、うまくいかないとすぐに支持率を失わないように方向転換する、というのが私の見方である。日本製鉄のUSスチール買収についても同様の結果だったと思っている。

2025年5月30日金曜日

日本経済の凋落が止まらない (2)米国の逆襲

 前回も書いたが、日本は敗戦後の焼け野原から奇跡的に急激な復興を遂げ、1980年代には米国にとって最大の経済的脅威を与える国になった。80年代の米国は日本に対して関税をかけるなど、現在中国に対して行っているような様々な圧力をかけて日本の力を弱めようとした。その中で最も大きな影響があったのは円高である。

円高に加えて90年代に入って日本の不動産バブルがはじけたことによって日本経済は勢いを失い、そのまま現在に至っている。多くの経済人は円高と日本がバブルがはじけたことに対する失敗が日本経済を弱めた原因であると言っている。しかし、バブル処理が終わってアベノミクスで金融政策を転換しても日本は好況には転じていない。その理由は成長戦略が実行できていないからである。

私は米国経済復活の本質的な理由に米国の大きな経済政策の転換があると思っている。それは製造業を捨ててイノベーションで勝負するという考えである。当時、米国が大きな貿易赤字に陥ったのは、米国の工場の質が悪く製品の品質で日本に負けていたからである。日本を叩いたとしても韓国、中国が後に続いており、米国製造業が復活できる見通しは立たなかったのだろう。

そこで取った第1の政策が製造のアウトソースである。世界で最も適した地域で生産する、という方針を取り、日本のバブルが崩壊した後は中国での生産を増やし、中国が世界の工場と言われるようになった。その結果中国の経済力が強くなり、今、米国は中国叩きに心を砕いている。

米国自身の強みはどこに求めるか?

彼らは米国の強みは「イノベーション力」にあるとして、イノベーションを起こした企業が最も大きな利益を上げられるような政策を取った。具体的には特許を重視したプロパテント政策である。これに従って90年代以降、米国の企業はいたるところで特許訴訟を起こし、世界中の企業から嫌われた。しかし、特許制度にはかなりの合理性があり、特許を無視することはできずに、米国企業は復活した。

事業分野でいうと、この40年間イノベーションが進んだのは半導体の分野である。デジタル半導体の性能は40年で100万倍程度向上し、他の分野を圧倒している。他の分野では性能が上がったとしても10倍程度だろう。シリコンバレーは世界のイノベーションのメッカとなった。イノベーション重視の政策は米国経済を見事に復活させたと思う。

現在はイノベーションが利益の源泉となるという経済原理は世界に浸透していると思う。そして日本経済が凋落を続けているのは他の国に比べてイノベーション力が低いからだと思っている。その大きな理由はイノベーション力を生産性の向上といった狭い意味でとらえている点が大きいと思う。

現在、トランプ政権は米国の製造業を復活させようと躍起になっている。しかし、たとえ工場を米国に移したとしても、米国の工場が他の国の工場よりも効率が良くなる可能性は低いと私は思っている。また、私は製造業の米国回帰についてトランプ氏がどこまで本気なのかも疑っている。彼にとってはメキシコ国境の壁と同様に支持率を上げるための方便ではないかと思っている。

2025年5月29日木曜日

日本経済の凋落が止まらない (1)何をもって凋落というか、インフレで凋落は止まるか?

 最近、経済ニュースというとトランプ関税関連が圧倒的に多いが、ここで論じる経済の話は数か月単位の話ではなく10年単位の経済動向である。

日本は第2次世界大戦で敗戦後、奇跡的経済復興を実現し、1980年台には世界2位になり1位の米国をも脅かす存在になった。しかし、バブル崩壊後「失われた30年」の間、経済は低迷し、国民総生産(GDP)では中国に抜かれ、ドイツに抜かれ、今年はインドにも抜かれると言われている。豊かさを実感する指標としては個人所得である「ひとり当たりGNI(GNIは、GDPに国内居住者や日本企業が海外への投資等によって得られる利子や配当などの所得の純受取額を加えたもの。一人当たりGNIはGNI総額を各国の人口で割った値)」のほうが適切だろう。そのひとり当たりGNIは2022年に日本は世界24位、2023年は37位となっており、G7各国の中で最下位である。2023年の大幅な順位低下には円安が影響していると思われる。

ひとり当たりGNIでは投資による収入をカウントしているのでモナコ、リヒテンシュタイン、バミューダ、ケイマン諸島といった富裕層を呼び込む投資国家が上位に来るが、これらは人口も規模も小さく日本と比較する意味はないだろう。しかし、G7で最下位、2023年には韓国にも抜かれた、といった事実は重く受け止める必要がある。円安は日本全体の購買力が落ちていることを意味するので経済力の本質をついていると言えるだろう。

最近は、物価高になって、給与水準も上がっているのでこれから日本経済は良くなる、という議論があるが、私はそうは思わない。アベノミクスでは3本の矢といって、第1の矢が金融緩和、第2の矢が公共投資、第3の矢が成長戦略である。第1の矢と第2の矢がうまくいって日本経済はインフレ基調になってきたが、第3の矢が機能していないので、このままでは円安が一層進むだけだと思っている。自民党にはアベノミクスを続ければ景気が良くなるという人がいるが、誰も第3の矢に対する方針を示してはいない。大きな成長戦略を示さない限り、日本経済の好転は望めないだろう。

成長戦略が重要ということは多くの人が指摘している。その大部分は労働生産性が上がっていないことを指摘して、DXが重要だと言っている。外れてはいないと思うが私には物足りなく感じられる。私は成長戦略の本質は国際競争力だと思っている。例えばDXを導入して労働生産性を上げたとしても、導入のペースが他の国よりも遅ければ、国際競争力は下がる続ける。つまり、他の国がDXを導入して成功したのを見てから自分も導入するのでは成長戦略とは言えないということである。この点にシナリオを持つ国のリーダが必要だと思っているが、私にはそのような人物は見当たらない。従って、日本経済の凋落は底を打っておらず、まだ落下中だと思っている。

2024年3月20日水曜日

今後の日本経済のカギは為替水準

 日銀は3月19日、マイナス金利の解除を発表し、大きく報道されている。春闘では満額回答が相次ぎ、高い賃上げが実現した。春闘で高い賃上げ、日銀のマイナス金利解除と、一連の経済ニュースは岸田総理の期待通りに進んでいる。一方で自民党の裏金問題は不透明さが続いており、政府の支持率は上がっていない。本来なら経済問題のほうが裏金問題よりはるかに影響が大きいので、支持率改善に向かうはずなのだが、そうならないのは、この動きが岸田総理の動きによりもたらされたのではない、ということが見透かされているからかもしれないと思う。

高い賃上げも、マイナス金利解除も確かに好ましいことである。しかし、それで、賃上げ、消費拡大、企業の業績向上、さらなる賃上げという好ましいサイクルに向かうかというと、それはまだ極めて不透明だと思う。賃上げを消費者が実感するのは今年の夏以降くらいだと思う。しかし、増えた収入はすぐには消費の増加には向かわない。これまで何年も物価高よりも低い賃上げに留まっていたので、これでやっと消費の削減が止まる程度だと思う。

来年も今年と同レベルの賃上げが行われれば、今度は消費増加のサイクルに向かうと思う。物価の上昇は落ち着いてきており、実質的な所得増が起こることと、2年連続の大幅賃上げで、賃上げが続くというマインドが醸成されるからである。従って、来年の賃上げ率が、日本経済の将来にとって極めて重要だと考えている。

問題は企業に来年も大きな賃上げを継続する体力があるかどうかだと思う。私はそのカギを握るのが為替の水準だと思っている。今年末時点で、$1=¥140以上なら好況感が続き、大幅賃上げの可能性が高く、$1=¥130以下なら先行き不透明感が強いので大幅賃上げは続かないだろうと思っている。135円くらいなら、企業によって好況感はまちまちだと思う。

欧米はインフレ退治のためにこの2年ほど金利を上げ続けた。一方で日本は、インフレよりも不況感が強く日銀は大規模金融緩和を続けてきた。結果として大きな金利差が続き円安になったことで、日本企業の景況感が良くなった。しかし、欧米はこれからは金利を下げる方向であり、日本はこれからは金利を上げる方向であるので、これからは方向性としては円高に向かうはずだと思われる。今年に入って日本の株価が上がっているのは、今後は円高が見込まれるので、為替差益が見込める外国人の日本株買いが出て、それが今年に入っての日本株の上昇につながっていると思う。

日銀は日本企業の体力が弱いことを知っているので、本来は大規模緩和を止めたくないのだと思う。しかし、欧米の金利が下がってきて、再び為替水準が円高に向かうと、打つ手が無くなってしまう。それで今回、マイナス金利、YCC、日本株の買い入れといった普通では無いような操作を止めることにした。その一方で国債の大量買入れは続けている。難しい状況で、植田総裁はうまく制御していると思う。今後の日本の金利はほぼゼロ金利が維持されると思う。

今後の為替水準に最大の影響を与えるのは米国の金利だろう。大統領選挙と絡んで、米国の金利がどの程度下がるかは予測が困難であるが、5年後のような長期の状況は$1=¥160近づくような円安に向かうだろうと私は予測している。そうなると日本の景況感も悪くないだろうと思う。

2024年3月3日日曜日

日経平均は史上最高値を更新したけれど・・・

 今年に入って日本の株価は上がっており、日経平均はバブル期の最高値を超えて史上最高値を更新した。現在の株価はバブルではないとみられており、さらに上がるという人も多い。その一方で街角の景況感は良くなく、物価高で苦しんでいる人がたくさんいるという。どちらも本当なのだが、これからどうなるかについてはいろいろな意見がある。私はいわゆるエコノミストと呼ばれている人達がテレビなどで語っていることに対して違和感を持っているので、それを書いておきたいと思う。

かなりの割合の人が、今年の賃上げが重要で、適切な賃上げが行われれば日本景気は好循環に入ると言っている。これは岸田総理をはじめとする政府の見方で、これを言う経済評論家は忖度を強みとしている人達だと私は思っている。賃上げは富の分配の変更で、従業員に富が移った分だけ企業の富が減る。その分だけ企業は先行投資に資金が減るわけでよいことだけではない。私は賃上げは好景気の本質的要因ではないと思っている。

もう少し考えている人は、賃上げだけではだめで、DXの推進とか、AIの活用とかで労働生産性を上げなくてはいけないと言っている。この意見は賃上げよりは本質をついていると思うが、私はまだ不十分だと思っている。

私は国の経済の強さを決める指標は国際競争力だと思っている。AIとかDXとかを使って労働生産性を高めることは世界中で行われている。問題は日本が他の国より速いペースで労働生産性を上げられるかどうかで、現在よりも労働生産性を上げられるかどうかという、「今より良くなるか?」という視点ではない。世界よりもゆっくりしたペースでしか改善が進まないならば日本の地位は下がり、好況感は得られないと思う。このことを指摘している人はほとんどいないと私は思っている。

日本が他の先進諸国よりも速いペースで労働生産性を上げられるかというと、私は絶望的に難しいと思っている。日本の小学校から大学までの教育、社会の至る所にある変化を嫌う仕組みなどが障害になるからである。これが変わって効果が出始めるのは早くても30年後だろうと思う。その一方でここ1年ほど日本の国際競争力は上がっており、本格的効果が出るのはこれからだと思う。

その要因は円安である。円安は、日本人の給与が下がっていることを意味しており、これは日本のコスト競争力が上がっていることを意味している。これは日本の国際競争力の向上を意味している。日銀が利上げをして、欧米の金利と変わら無くなればまた$1=¥120のようなレベルになるかもしれないが、おそらくそれは起こらないだろう。欧米(特に米国)は中国との対立から中国以外で良質で安価な労働力を求めているので、「円が安すぎる」といった政治的圧力もしばらくは出ないだろう。TSMCの半導体工場の日本進出に代表されるような、外資系企業の製造拠点が日本に増えて日本の好況感がしばらくは出るだろうと思う。

これは日本人の賃金が安いことによるものなので、本質的にはあまり好ましいものではないが、少なくとも今よりは生活が楽になるので、大きな不満は出ないように思う。このままいくと、企業の役員クラスは外国人、中間管理職以下が日本人という構図に収斂していくと思う。それはそれで悪くはないと思うのだが、寂しいとは思う。

更にAIの普及が仕事を奪うという将来に向けた問題がある。これに対して日本社会は大きなリスクを抱えていると思うが、その一方で可能性もあると私は思っている。これに対しては別途書いてみたい。

2024年1月29日月曜日

囲碁AIの利用経験から感じるAIの特徴

 現在、ChatGPTに触発されて大AIブームが来ている。様々な分野でのAIの利用が人間の業務に多大な影響を与えることは間違いないだろう。AIに対する巨大投資のきっかけは2016年にGoogle傘下の英Deep Mind社が開発した囲碁AIのAlpha Goが人類最強のプロ棋士に勝ったことであることは間違いないだろう。囲碁は将棋やチェスに比べて場合の数が桁違いに多く、コンピュータが人間に勝つのはまだずっと先だろうと言われていた。しかし、Alpha GoはDeep Learningの技術を使って、それを実現してしまった。

Deep MindはAlpha Go(後にAlpaha Go Leeと命名)、に続いてAlpha Go Master、Alpha Go Zeroという改良版を出している。Alpha Go Leeは過去のプロ棋士の対局の棋譜を学習させて、当時の世界トップのLeeに勝った。続いてAlpha Go Masterでアルゴリズムの改良を行い、日本のトップよりレベルが上の中国のトップ棋士に100連勝した。ちなみに人間ではどんなに強い人でも年間勝率80%程度である(年間60-70局程度)。更にAlpha Go Zeroでは一切人間の棋譜を参考にせず、AIにルールだけ教えてAI同士の対局をさせ、初心者から初めて、学習を積み重ねてAlpha Go Masterを超えるレベルに到達した。これでDeep Mind社は「もはや人間と対局させる意味はなくなった」として、一般人への公開も取りやめ、現在では対局することはできない。

しかし、Deep Mindに触発されて複数の組織が囲碁AIを開発して、無料でダウンロードして使えるようになっている。これらの囲碁AIも人間のトップ棋士よりも強い。私を含めて多くの囲碁ファンはGPU入りのPCを買って囲碁AIをダウンロードして使っている。前置きが長くなったが、以下に囲碁AIの利用経験から感じたAIの特徴を整理する。

〇AIは間違える
これまで「コンピュータはできることは限られているが間違えることはない」と思われていたが、AIは間違える。AIは決まったプログラムを実行しているのではなく、アルゴリズム自体を学習で変えているのでその中に間違いが含まれるのは当然である。これは全てのAIに言えることだろう。但し、人間より間違える頻度は低いので人間よりも囲碁は強い。

〇AIには創造性がある
一般には「AIには創造性がない」という人が多いが、私は創造性があると思っている。その証拠に囲碁の定石はAIが出現して大きく変化した。今までは「良くない」と思われていた打ち方が実は良い方法であると知って、プロ棋士の打ち方が変わった例は多い。新しい打ち方がAIによって創造されている。「それは囲碁という限られた世界だからだ」という人がいるかもしれない。しかし、音楽の作曲は音の組み合わせから心に響く組み合わせを求める作業であり、私はAIで作曲は十分にできると思っている。

〇AIの優れた点は判断力
AIといえども最後まで読み切って判断を下しているわけではなく、例えば20手先まで読んで最も有利になる手を現時点での最善手として決定している。つまり20手先の局面で「どちらが有利か」という判断が極めて重要である。この判断力でAIは極めて優れており、プロ棋士もほとんどAIの判断を参考にしている。最善の結果に至るにはどのような手の組み合わせが良いかは「読み」と言われる。「読み」では必ずしもAIが人間に勝っているとは言えない。例えば「取るか取られるか」という大変な戦いの最中で、20手先でもまだ結論が出ていないような場合、AIはあいまいな判断をするが、人間は30手先でも結論が出るまで読んで結論を出す。複雑な読みが必要な局面ではトッププロがAIに勝ることは少なくない。コンピュータというと読みが優れたものと考えがちだが、Deep Learningによって人間よりも正確に、優劣を判断できるようになった点が、AIが人間より強くなった最大のポイントだと思う。

以上のように、AIの特徴は従来のコンピュータからイメージするものとはかなり違っている。この点をきちんと押さえることが今後のAI利用で重要になると思う。

2023年12月28日木曜日

日本経済の先行きを考える

 年末が近づいてきた。昨年末にも同じようなことを書いたのだが、私には政府も日銀も日本経済が上向くように動いているように感じられないので、改めて私の経済に対する考えを整理してみたい。

政府も日銀も賃上げが進めば消費が増えて経済が好循環に向かうと考えているようだが、私はそうは考えていない。企業の将来性が明るいかどうかは、一時的な売り上げや利益よりもその企業の競争力にあると思う。国単位で考えれば日本経済の先行きが明るいかどうかは日本経済の国際競争力が高いかどうかが鍵だと思う。企業が賃上げをすれば売り上げに相当する国内の資金循環は増えるかもしれないが、それで企業の利益が減って投資余力が減るとすれば国際競争力の観点からはむしろ逆効果だろう。そうでなくても日本企業の利益率は低いと言われている。

その一方で日本企業は利益を預金や株の持ち合いといった内部留保に回していて、投資が少ないというのも事実である。それで企業がもっと資金を投資に回すように促したいという政府の意図は分かる。しかし、企業が積極的に投資しないのは、投資を十分に回収できる自信がないからだと思う。人口が減少して将来市場が縮小しそうな国内ではある程度やむを得ない。国際競争力の高い企業ならば投資ができるはずである。

良く言われているように日本全体の国際競争力はバブル崩壊以降下がり続けている。これは日本の金融政策の失敗だなどと言われているが私は競争の軸が変わったことが本質だと考えている。1980年代、日本製の製品の品質は米国を凌駕し、日本からの輸出が急増し米国経済は危機に陥った。米国は対日関税や円高などで日本を抑えようとしたが、仮にそれに成功しても、韓国や中国が日本と同様に成長してくることは目に見えていた。そこで経済活動のゴールを変えることを考えた。つまり「製品で勝負しない、イノベーションで勝負する」というプロパテント政策である。これは大成功をおさめ、シリコンバレー発のイノベーションが世界を席巻するようになり、米国経済は力を取り戻した。そしてそれはすでに定着している。最近、米国は製造拠点を出しすぎたと反省し元に戻しつつあるが、「イノベーションが最も重要」という経済原理は変わらないと思う。

日本は明治維新以来、工業大国を目指して教育から産業政策まで一貫した政策を取ってきた。その結果、日本の製造現場は世界最高の競争力を手に入れた。その典型例がトヨタ式生産方式である。しかし、日本は政府も企業も「イノベーション重視」に舵を切れないでいる。これが、日本経済低迷の真の原因だと思っている。

トヨタ式生産方式は「カイゼン」を常に続けることが本質である。これは同じ作業を何度も繰り返すうちに作業効率を上げていくやり方である。しかし、例えばソフトウェア開発にはこの方法は使えない。ソフトウェアは開発であって製造ではない。同じものを2度作ることはない。ソフトウェアの大量生産は誰にでも簡単にできる。現在世界では付加価値の比重がハードウェアからソフトウェアに移行している。しかし、日本企業の経営者はハードウェア事業を経験した人が多く、日本のソフトウェア開発力はかなり低い。

社会的にも日本の習慣などにはイノベーションを阻害する要因が数多くある。日本の習慣は江戸時代に形成されたものが多いが、徳川幕府は自分の立場を安泰にするために「大きく変化させないこと」を国民に強いた。これがいたるところで習慣として残っている。そしてこれは権力者には都合の良いものなので現在に至るまで基本的スタンスは保存されている。これを変えるには、権力者を大きく若返らせることが重要だと私は考えている。

現在裏金問題で自民党が大きく揺れている。私は岸田総理には期待していないが、政治家間の力関係が変わって大臣などが一気に若返ることがあれば面白いと思っている。

これで私の年内のブログは最後としたい。

良いお年をお迎えください。


2023年12月14日木曜日

地球温暖化の原因を考える(2)

 前回は地球温暖化の原因として地表で発生する熱量の増加が語られていないことを指摘した。今回は、地表から放出される熱量の減少の主原因が本当にCO2の増加にあるのかに関して私の感じている疑問を囲うと思う。CO2の増加が地球温暖化に寄与している点に関しては私は疑問を持っていない。私の疑問は「本当にそれが主原因か」という点にある。

私の疑問はCO2の増加が地球温暖化の主原因であるとこれだけ長い期間言われているにもかかわらず、一向に定量的データが出てこない点にある。私の期待しているのは「昨年の世界のCO2増加量は何トンなので地球温暖化に何度C分だけ寄与した」というようなデータである。

定性的に考えると、CO2よりも水蒸気のほうがはるかに温室効果が高いと思う。CO2の増加による温室効果は体感することはできないが、湿度が高いことは体感できるからである。水は恩田が高いと気化しやすいので、その影響で気温が上がる、気温が上がるとますます気化しやすくなるのでますます気温が上がる、ということになりそうに思う。但し水蒸気は上昇すると温度が下がり雨や雪になって再び地上に落ちる、これでバランスが取れているのだと思う。

地上では過去に何度も氷河期を経験している。地表の温度が上がると水蒸気が増えて雲が増える。雲は太陽光を反射するので、地表に届くエネルギーが減少する。通常はこれが短期間で循環しているのだが、赤道付近でできた水蒸気が海流の影響などで南北方向に流れるようになると、地表面が雲に覆われる割合が増えて平均的には地表の温度が下がり氷河期につながるのではないか、と私は思っているが、十分な根拠があるわけではない。

それでも、水蒸気のほうがCO2よりも温室ガス効果が高いというのは正しいと思うので仮にCO2の増加により平均気温が上がると、水蒸気が増えて温度上昇は加速し、何かのきっかけで雲により地表に到達する太陽エネルギーが減少して逆に地表温度が下がる、ということになりそうに思う。

前回の議論と合わせて、私は「CO2の増加が大気温を上げる主原因だ」という説には疑問を持っているが、「CO2を増やさないために化石燃料の利用を控えるべきだ」という意見には賛成なので、特に強く主張するつもりはない。世界ではこのようなことを意識してより深い議論をしている集団がありそうに思うが、日本では「CO2を増やさないために化石燃料の利用を控えるべきだ」だけが議論されているように感じており、議論が次のステージに移った時に対応できないのではないかと危惧している。

2023年12月10日日曜日

地球温暖化の原因を考える

 今年に入って、ブログの更新頻度が大きく下がっている。コメントもほとんどなく、たまにコメントが入ると思うとコンピュータで作成したようなコメントなのでやる気が下がっていたのだが、昨日、意外な人から「最近ブログを更新していませんね」と言われた。「読んでいる人もいるんだ」と思い、ブログを更新してみようと思った。

今回のテーマは地球温暖化である。地球温暖化の原因は大気中のCO2増加であると言われ、世界中がCO2排出量の削減に躍起となっている。しかし、私はそれは地球温暖化の原因の全貌を示していないと感じている。

地球の大気温は太陽光による温め効果をもたらす熱量と、地表の熱が宇宙空間に放出され対気温を下げる熱量がバランスしているからだろう。これは地球誕生以来何十億年もかけてバランス状態に達したものと思われる。太陽光のエネルギーは全てが熱に変わるわけではなく、一部は光合成によって植物となり、その植物を食べる動物にもなって地球表面に固定化される。これが何百万年、何千万年もかけて化石燃料となる。

人類の活動が活発化したこの2百年ほど、人類は化石燃料を燃やして熱エネルギーに変え、様々な用途に用いている。おそらく新たに化石燃料ができる何万倍もの速さで過去の化石燃料を燃やしているだろうと思う。その結果として大気中にCO2が増加する。CO2は温度を逃がしにくい温室ガス効果があり、これが地球温暖化の主な要因であると説明されている。CO2の温室ガス効果は、地表からのエネルギー放出を下げることになるので、これが地球温暖化の一因となっていることは間違いないだろう。しかし、地表の大気温は熱の発生と放出のバランスで保たれていることを考えると、人間の活動による熱の発生量の増加が、少なくとも半分の温暖化効果をもたらしていると考える。

現在、世界では再生可能エネルギーで人間の活動を賄おうとしている。これが100%実現できれば、発生熱量も抑えられ、放出熱量も下がらなくなるので、温暖化は止まりそうである。しかし、CO2を発生しないという理由で原子力発電や核融合に頼ると、放出熱量の下げは止まっても、発生熱量の増加は抑えられない。従って、温暖化の半分にしか対応していないと考える。だからと言って原子力発電を止めるのは現実的ではないと考える。私は、原子力発電を利用しつつ、大気中のCO2を人工的に固定化する技術を開発するべきだと思う。

この私の議論は自分では極めてまともだと思っているが、このような意見を言っている人を見たことがない。私はどこか間違っているのかという不安を感じつつ、「世の中の議論はおかしいな」と感じている。

2023年6月5日月曜日

楡周平の「和僑」を読んだ

 最近、楡周平の小説「和僑」を読んだ。この小説はヒット作となった「プライムタウン」の続編で、「プライムタウン」で大手商社から出身した街の町長に転じて町興しを行った主人公が、将来の人口減少時代に備えて、農業法人を設立して農業の輸出産業化をもくろむといったストーリーの経済小説である。

舞台が地方の町で高齢者が多く、その中で大手企業出身で自身も定年世代になっている主人公の発想は、自分の老後はある程度資産のめどが立っているものの日本社会の高齢化、活力低下に対する問題意識持っている。様々な友人や仲間、反発する人との会話は自分にとっても「あるある」の心情が多く、共感する部分がかなりあった。私は農業に対する知識は無いが、現在の農業従事者の意識はこんな感じか、と感じられた。少し問題や対策を単純化しすぎていると感じた部分はあったが、小説なので面白ければよい。私にとっては十分に面白かった。

日本の経済小説は、これまで鉄鋼、銀行、商社など時代の花形企業の内幕を描くような内容が中心だったが、この作品は、それとは違って、「現在はそれほど注目されていないが伸びしろの大きな産業」に着目している点が新鮮だと感じる。

2015年に発行された本なのでまだ政府の農業法人を後押しする政策はまだ出てこないが、この人が今またこのようなテーマで小説を書けば現在の政策との関連が出てきて、またそれは面白いだろうと思う。この作者の本をまた読んでみようと思う。