2025年5月29日木曜日

日本経済の凋落が止まらない (1)何をもって凋落というか、インフレで凋落は止まるか?

 最近、経済ニュースというとトランプ関税関連が圧倒的に多いが、ここで論じる経済の話は数か月単位の話ではなく10年単位の経済動向である。

日本は第2次世界大戦で敗戦後、奇跡的経済復興を実現し、1980年台には世界2位になり1位の米国をも脅かす存在になった。しかし、バブル崩壊後「失われた30年」の間、経済は低迷し、国民総生産(GDP)では中国に抜かれ、ドイツに抜かれ、今年はインドにも抜かれると言われている。豊かさを実感する指標としては個人所得である「ひとり当たりGNI(GNIは、GDPに国内居住者や日本企業が海外への投資等によって得られる利子や配当などの所得の純受取額を加えたもの。一人当たりGNIはGNI総額を各国の人口で割った値)」のほうが適切だろう。そのひとり当たりGNIは2022年に日本は世界24位、2023年は37位となっており、G7各国の中で最下位である。2023年の大幅な順位低下には円安が影響していると思われる。

ひとり当たりGNIでは投資による収入をカウントしているのでモナコ、リヒテンシュタイン、バミューダ、ケイマン諸島といった富裕層を呼び込む投資国家が上位に来るが、これらは人口も規模も小さく日本と比較する意味はないだろう。しかし、G7で最下位、2023年には韓国にも抜かれた、といった事実は重く受け止める必要がある。円安は日本全体の購買力が落ちていることを意味するので経済力の本質をついていると言えるだろう。

最近は、物価高になって、給与水準も上がっているのでこれから日本経済は良くなる、という議論があるが、私はそうは思わない。アベノミクスでは3本の矢といって、第1の矢が金融緩和、第2の矢が公共投資、第3の矢が成長戦略である。第1の矢と第2の矢がうまくいって日本経済はインフレ基調になってきたが、第3の矢が機能していないので、このままでは円安が一層進むだけだと思っている。自民党にはアベノミクスを続ければ景気が良くなるという人がいるが、誰も第3の矢に対する方針を示してはいない。大きな成長戦略を示さない限り、日本経済の好転は望めないだろう。

成長戦略が重要ということは多くの人が指摘している。その大部分は労働生産性が上がっていないことを指摘して、DXが重要だと言っている。外れてはいないと思うが私には物足りなく感じられる。私は成長戦略の本質は国際競争力だと思っている。例えばDXを導入して労働生産性を上げたとしても、導入のペースが他の国よりも遅ければ、国際競争力は下がる続ける。つまり、他の国がDXを導入して成功したのを見てから自分も導入するのでは成長戦略とは言えないということである。この点にシナリオを持つ国のリーダが必要だと思っているが、私にはそのような人物は見当たらない。従って、日本経済の凋落は底を打っておらず、まだ落下中だと思っている。

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