2025年6月1日日曜日

日本経済の凋落が止まらない (4)敗戦からの奇跡の復興を遂げた日本の強み

 ここからは日本経済の凋落を止めるための対策について考えていきたい。

対策の第一歩は日本の強みを明確に認識することである。米国は「米国の強みはイノベーション力にある」と喝破して現在の強みに達した。敗戦の焼け野原から30年程度で世界トップをうかがえるレベルまで上り詰めたのは日本にどんな強みがあったからだろうか?

私は製造業の強みにあると思う。製造業には商品企画、開発、製造、流通、保守というプロセスがある。そして事業の成功を担う大きな要因には他に営業がある。これらの中で日本企業が特に強いのは製造だと思う。

70年代、80年代に家電や自動車で日本がシェアをどんどん伸ばしていった時期には、新製品のリリースペースが欧米の企業よりも圧倒的に早かったということがあったので開発が強みだという人もいるだろう。今でも、低消費電力化といった数値競争の新製品開発では日本企業は強いと言えると思う。但し、現在ではこの分野には中国という強敵がいる。イノベーティブな製品を出すには、マーケティング、商品企画、開発という全体が必要になるが日本企業は全体としてマーケティングが弱く、この意味での開発は強いとは言えないと思う。

製造の分野では間違いなく強いと思う。トヨタ式生産方式は世界に誇れる日本のシステムである。トヨタのOBは様々な企業にトヨタ式を教えているが、トヨタのようにカイゼンを企業文化にまで持ち上げるのは容易ではなく、簡単に追い抜かれることは無いだろう。トヨタでなくても日本企業の製造力は全体として高いと言えると思う。人材の観点からいうと日本企業の強みはブルーカラーにありホワイトカラーは強いとは言えないと思っている。

日本の製造業が強くなったのは明治維新以来の文明開化、富国強兵政策が結実したものだと思っている。明治維新でできた新政府は、江戸時代の鎖国で世界にいい気く出遅れたことを悟り、「これからは工業化の時代が来る」と考えて初等教育から高等教育、産業政策などの政策全体を日本が工業大国になる方向に舵を切った。20世紀に入るころには日本はアジアでは突出した工業国になっていた。増長した日本軍が戦争に突き進み敗戦国となったわけだが、戦後短期間に復興できたのはそれまでの50年以上の日本の政策による日本社会の工業化ポテンシャルの高まりがあったと思っている。

しかし、バブル崩壊後日本経済が低迷しているのは、産業の成功のカギがイノベーションに移り、日本がイノベーションに強くないことを意味していると思う。次回はこの点について掘り下げてみたい。

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