今年に入って日本の株価は上がっており、日経平均はバブル期の最高値を超えて史上最高値を更新した。現在の株価はバブルではないとみられており、さらに上がるという人も多い。その一方で街角の景況感は良くなく、物価高で苦しんでいる人がたくさんいるという。どちらも本当なのだが、これからどうなるかについてはいろいろな意見がある。私はいわゆるエコノミストと呼ばれている人達がテレビなどで語っていることに対して違和感を持っているので、それを書いておきたいと思う。
かなりの割合の人が、今年の賃上げが重要で、適切な賃上げが行われれば日本景気は好循環に入ると言っている。これは岸田総理をはじめとする政府の見方で、これを言う経済評論家は忖度を強みとしている人達だと私は思っている。賃上げは富の分配の変更で、従業員に富が移った分だけ企業の富が減る。その分だけ企業は先行投資に資金が減るわけでよいことだけではない。私は賃上げは好景気の本質的要因ではないと思っている。
もう少し考えている人は、賃上げだけではだめで、DXの推進とか、AIの活用とかで労働生産性を上げなくてはいけないと言っている。この意見は賃上げよりは本質をついていると思うが、私はまだ不十分だと思っている。
私は国の経済の強さを決める指標は国際競争力だと思っている。AIとかDXとかを使って労働生産性を高めることは世界中で行われている。問題は日本が他の国より速いペースで労働生産性を上げられるかどうかで、現在よりも労働生産性を上げられるかどうかという、「今より良くなるか?」という視点ではない。世界よりもゆっくりしたペースでしか改善が進まないならば日本の地位は下がり、好況感は得られないと思う。このことを指摘している人はほとんどいないと私は思っている。
日本が他の先進諸国よりも速いペースで労働生産性を上げられるかというと、私は絶望的に難しいと思っている。日本の小学校から大学までの教育、社会の至る所にある変化を嫌う仕組みなどが障害になるからである。これが変わって効果が出始めるのは早くても30年後だろうと思う。その一方でここ1年ほど日本の国際競争力は上がっており、本格的効果が出るのはこれからだと思う。
その要因は円安である。円安は、日本人の給与が下がっていることを意味しており、これは日本のコスト競争力が上がっていることを意味している。これは日本の国際競争力の向上を意味している。日銀が利上げをして、欧米の金利と変わら無くなればまた$1=¥120のようなレベルになるかもしれないが、おそらくそれは起こらないだろう。欧米(特に米国)は中国との対立から中国以外で良質で安価な労働力を求めているので、「円が安すぎる」といった政治的圧力もしばらくは出ないだろう。TSMCの半導体工場の日本進出に代表されるような、外資系企業の製造拠点が日本に増えて日本の好況感がしばらくは出るだろうと思う。
これは日本人の賃金が安いことによるものなので、本質的にはあまり好ましいものではないが、少なくとも今よりは生活が楽になるので、大きな不満は出ないように思う。このままいくと、企業の役員クラスは外国人、中間管理職以下が日本人という構図に収斂していくと思う。それはそれで悪くはないと思うのだが、寂しいとは思う。
更にAIの普及が仕事を奪うという将来に向けた問題がある。これに対して日本社会は大きなリスクを抱えていると思うが、その一方で可能性もあると私は思っている。これに対しては別途書いてみたい。
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