年末が近づいてきた。昨年末にも同じようなことを書いたのだが、私には政府も日銀も日本経済が上向くように動いているように感じられないので、改めて私の経済に対する考えを整理してみたい。
政府も日銀も賃上げが進めば消費が増えて経済が好循環に向かうと考えているようだが、私はそうは考えていない。企業の将来性が明るいかどうかは、一時的な売り上げや利益よりもその企業の競争力にあると思う。国単位で考えれば日本経済の先行きが明るいかどうかは日本経済の国際競争力が高いかどうかが鍵だと思う。企業が賃上げをすれば売り上げに相当する国内の資金循環は増えるかもしれないが、それで企業の利益が減って投資余力が減るとすれば国際競争力の観点からはむしろ逆効果だろう。そうでなくても日本企業の利益率は低いと言われている。
その一方で日本企業は利益を預金や株の持ち合いといった内部留保に回していて、投資が少ないというのも事実である。それで企業がもっと資金を投資に回すように促したいという政府の意図は分かる。しかし、企業が積極的に投資しないのは、投資を十分に回収できる自信がないからだと思う。人口が減少して将来市場が縮小しそうな国内ではある程度やむを得ない。国際競争力の高い企業ならば投資ができるはずである。
良く言われているように日本全体の国際競争力はバブル崩壊以降下がり続けている。これは日本の金融政策の失敗だなどと言われているが私は競争の軸が変わったことが本質だと考えている。1980年代、日本製の製品の品質は米国を凌駕し、日本からの輸出が急増し米国経済は危機に陥った。米国は対日関税や円高などで日本を抑えようとしたが、仮にそれに成功しても、韓国や中国が日本と同様に成長してくることは目に見えていた。そこで経済活動のゴールを変えることを考えた。つまり「製品で勝負しない、イノベーションで勝負する」というプロパテント政策である。これは大成功をおさめ、シリコンバレー発のイノベーションが世界を席巻するようになり、米国経済は力を取り戻した。そしてそれはすでに定着している。最近、米国は製造拠点を出しすぎたと反省し元に戻しつつあるが、「イノベーションが最も重要」という経済原理は変わらないと思う。
日本は明治維新以来、工業大国を目指して教育から産業政策まで一貫した政策を取ってきた。その結果、日本の製造現場は世界最高の競争力を手に入れた。その典型例がトヨタ式生産方式である。しかし、日本は政府も企業も「イノベーション重視」に舵を切れないでいる。これが、日本経済低迷の真の原因だと思っている。
トヨタ式生産方式は「カイゼン」を常に続けることが本質である。これは同じ作業を何度も繰り返すうちに作業効率を上げていくやり方である。しかし、例えばソフトウェア開発にはこの方法は使えない。ソフトウェアは開発であって製造ではない。同じものを2度作ることはない。ソフトウェアの大量生産は誰にでも簡単にできる。現在世界では付加価値の比重がハードウェアからソフトウェアに移行している。しかし、日本企業の経営者はハードウェア事業を経験した人が多く、日本のソフトウェア開発力はかなり低い。
社会的にも日本の習慣などにはイノベーションを阻害する要因が数多くある。日本の習慣は江戸時代に形成されたものが多いが、徳川幕府は自分の立場を安泰にするために「大きく変化させないこと」を国民に強いた。これがいたるところで習慣として残っている。そしてこれは権力者には都合の良いものなので現在に至るまで基本的スタンスは保存されている。これを変えるには、権力者を大きく若返らせることが重要だと私は考えている。
現在裏金問題で自民党が大きく揺れている。私は岸田総理には期待していないが、政治家間の力関係が変わって大臣などが一気に若返ることがあれば面白いと思っている。
これで私の年内のブログは最後としたい。
良いお年をお迎えください。
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