2020年4月29日水曜日

対コロナ経済対策の欧米の違い

英国エコノミスト誌にコロナによる経済問題に対する対応の仕方のアメリカとヨーロッパの違いを分析する記事が出ており、「なるほど」と感じたので紹介しておきたい。
コロナはパンデミックを引き起こし世界中で外出禁止令が出て経済は縮小している。これに対してヨーロッパでは基本的に休業補償という形で、休業によって収入が無くなった人に収入を補てんする方式が取られている。70%程度の補償が多いようである。
アメリカでは経営が悪化するとすぐに解雇につながる。失業保険申請者が一週間で500万人に及び、合計では2500万人を超えている。アメリカではこの対策として失業者に対する給付金を増額することを基本としている。これだけでは対応不十分なので雇用維持奨励金のようなものも加えているが、ヨーロッパが雇用維持を原則とした対応策を基本としているのに対してアメリカは解雇はかなりの程度受け入れて、失業者の生活を補償するという対策が中心となっている。
一見、ヨーロッパのほうが安定していて良さそうに見えるし、私もそう思っていた。しかし、エコノミスト誌はアメリカ方式にも良い点があるとしている。それは雇用の流動性を維持しているという点である。今回のコロナ災害が一過性のもので終われば元に戻るものならばヨーロッパ方式のほうが良いだろう。しかし、元には戻らず、復活したときには産業構造が変わってしまうようなものならば、アメリカ方式のほうが柔軟性に富んでいると言える。
実際、アメリカでは大量の解雇が起こる一方でAmazonは10万人単位で雇用を増やしている。これができるのはアメリカシステムの強みだという。多分、今回のパンデミックが治まっても、ネット通販の増加したシェアは下がらないように思う。アメリカはそれに柔軟に対応できるのに対し、ヨーロッパでは雇用は維持されるので産業構造の転換は起こりにくい。
日本はどうだろうか? 社会はヨーロッパ型を好んでいることは明らかなように思う。その一方で打ち手は一律10万円などのアメリカ型になっている。要するに思想が無く、準備もできていないので「すぐできる」打ち手を手探りで探しているように思う。メディアは困っている人の事例を挙げて大騒ぎし、政府は紹介された困っている人の対策にまず動く、というのが典型的な日本的対応である。しかし政府の対策はもっとマクロな視点から見た姿勢をまず考え、具体策を現実に合わせて実行していくことが重要だと思うのだが、マクロな視点が全く欠落しているように感じている。

2020年4月26日日曜日

うっすら見え始めたコロナ後の世界

4月2日に私は「COVID-19後の世界は、回復したとしても元には戻らない」と書いた。その視点で私が言えたのは「IT技術の活用は広がる」「日本のITの利用遅れはさらに広がる」程度のことだったが、3週間経過してもう少し具体的なイメージが見え始めた感じがしている。
・ITの利用が大幅に進む
これは誰でもが考えることで、特に私の見方に特別な点は無い。しかし、その影響の社会全体に対する広がりはまだあまり指摘されていないように思う。
・原油需要の減少は長期間続く
最近、原油価格が急落している。その理由は最初はロシアとサウジアラビアの減産交渉の決裂だったのだ。その後、ロシアとサウジアラビアは再交渉で減産の目途を付けたが最近では世界全体の需要減少が大きく、原油価格は一時マイナスにまで陥った。私はコロナ治療薬が開発されたとしても、原油需要は元には戻らないだろうと思っている。観光需要は2年くらいかけて元に戻ると思うが、業務需要、所謂「出張」は半分くらいしか戻らないと感じている。その理由は多くの経営者が実際に人を派遣しなくても仕事をすることができることを知るからである。原油消費の減少は地球温暖化防止にも役に立つ。ので人の移動の減少は歓迎されるだろう。結果として航空会社の経営などは悪化したままであろう。
・世界は大幅なインフレになる
今回のCOVID-19収束後に私はかなり激しいインフレが来るだろうと感じている。その理由は各国政府が経済対策として膨大な費用を投じざるを得ないからである。その原資は無いので、国債発行を増やすしかない。しかし、国の借金が増えすぎると政府に対する信頼性が落ちる。自然な流れとして、資金投入を増額して、日本ならば日銀が1万円札を大量に発行して、資金流通量を増やす。これまでも「金余り」は指摘されていたが、銀行に資金が入るだけでは不十分で直接国民に資金を配布する方法を検討する結果、全体として資金あまりの状態になり、貨幣価値が下がる、つまりインフレになる。
世界最大の経済大国である米国のトランプ大統領がこの方式を好むと思われるので、世界全体がインフレになる可能性は高いと思う。インプレのペースをFRBがうまく制御できるかどうかは不明で、問題を起こす可能性も高いが、インフレになることは確実なように思われる。
・日本の世界における地位は下がる
これらの根本的な原因はITの活用である。日本国内でもIT利用が活性化することは確実だと思われるが、世界の中でのペースは遅い。平成の30年間、日本は長期低落傾向にあったとされているが、令和に入ってこの傾向は加速すると思われる。もちろん私も日本人なのでそうならないことを望むが、客観的に見れば日本の長期低落傾向は加速するとしか思えない。

2020年4月20日月曜日

「世界のニュース」のススメ

現在、テレビで報じられるニュースの中ではCOVID-19関連のニュースが群を抜いて多いが、私はテレビでニュースを見る際にNHKーBSの「世界のニュース」をお勧めしたい。世界のメディアでは様々な視点があり、世界ではどのような取り組みがあるかを知ることができるからである。
NHKーBSの世界のニュースには朝7時から8時の「ワールドニュース」と8時から9時と11時から12時のの「キャッチ!世界のトップニュース」とがあるが、私は「ワールドニュース」のほうをお勧めしたい。
「ワールドニュース」は米国、ドイツ、フランス、ロシア、中国、韓国(選択される国は日によって異なる)などの各国のトップメディアのトップニュースを5-10分程度ずつ、翻訳付きで流すものである。
これに対して、「キャッチ!世界のトップニュース」のほうはNHKが編集して解説を加えた番組である。「ワールドニュース」が世界のニュースの翻訳であるのに対して、「キャッチ!世界のニュース」は世界のニュース番組をNHKが編集したNHKの番組であると言える。当然、NHKの価値観が色濃く含まれている。「ワールドニュース」も日によって選択される国が異なるのでNHKのフィルタリングはかかっていると思うが、選択された国のニュースをNHKが切り貼りしてつないでいる感じはしないので、NHKのフィルタリングは限定的だと思う。
NHKの考えは地上波のNHKのニュースにも含まれており、「キャッチ!世界のニュース」には視点として新しいものは少ないが、直接海外の番組を見るに近い「ワールドニュース」には日本では感じられない視点が含まれていると感じる。私はNHKの情報フィルタリングには不適切な部分が多いと感じている。
今日の番組を見て感じたのは、COVID-19を克服したと感じられる中国と韓国の規制緩和に対する慎重な姿勢である。彼らの行動を見ていると、仮に感染者が減ってきたとしても、日本の緊急事態宣言程度の規制は今後、長期間続ける必要があると感じる。一方、欧米では経済活動の再開圧力が強い。特に米国ではトランプ氏の再開姿勢が強い。これは一月もすると結果が見えてくると思うので5月末程度まで規制を続けていれば日本の進むべき方向性が見えてくるだろう。
もう一つ感じたのは、世界各国では政府レベルの遠隔教育に対する取り組みがかなり多いという点である。当然のことながらデバイスを持たないので教育を受けられない子供たちがいるのでそれに対する対策も報じられている。このような動きと比較して日本の文科省の動きは悪いと、改めて感じている。

2020年4月18日土曜日

コロナ禍を有効に使うためにできること

緊急事態宣言が宣告に広がり、連休明けに解除される見通しもほぼ無いと皆は考えているだろう。最低でもこの状態が3ヵ月は続くだろう。世間では「団結して乗り切ろう」というようなトーン一色だが、悪いことばかりではないと思う。
まず、「収入が減った人に30万円」が「全員に10万円」になった。これに「ラッキー」と思っている人は少なくないだろう。私もその一人である。全員の収入が減っているわけではなく、仕事量が減ったが、収入は変わらないという人はかなりいるはずである。こういう人は一切声を上げず「怖い」などと言っている。
この状態が3ヵ月から半年続くとなると、このような余裕の増えた人達が空いた時間をどう使うかが、この問題が治まった時の競争力に大きく影響すると思う。レストランなどでも、「困った」「閉めるか空けるか」ばかりを悩んでいる人と、「宅配ができないか」「持ち帰りを増やそう」と考え、実行する人とでは、外出抑制時だけでなく、正常に復帰した後でも大きな差がつくだろう。これは工夫した人が成功する、という正常な動きである。
ホワイトカラーにとってはこの機会に勉強することが極めて重要だと思う。特に、会社がサポートしているシステムを利用するだけでなく、世の中にある無料の通信サービスを使ってどんな仕事ができるかを工夫し、マスターした人と、子供と遊んで暮らした人とでは大きな差がつくだろう。
もう一つ、国民全員にとって重要なのは政治家の力量が見えるということである。前代未聞の事態が起こっているので、どうすればよいかは分からない。首相、大臣、地方の首長などの力量がはっきり見えてくるので、次の選挙に生かすべきだと思う。通常では政治家は官僚から上がってきた提言を処理すればよいのだが、官僚自身がどうすればよいか分からない、あるいは前例に縛られて適切な動きができないので、官僚に任せきれない状態になっている。本人の判断力が国民に見えてくると思う。企業でもおそらく同様のことが起こっているのではないかと思っている。部下が上司の力量を判断するチャンスだと思う。

2020年4月8日水曜日

プランBの無い日本政府

安倍総理の緊急事態宣言の記者会見を見た。緊急事態宣言自体は良いもので必要なものだと思う。具体的にどの業種に休業を求めるかについては東京都と日本政府の間でまだ調整がついておらず、今週いっぱいの調整となるようであるが、具体的な行動指針が出るので、意味は大きいと思うし、もっと早く出すべきだったと私は感じている。
質疑で気になったのは「欧米に比べて罰則のない弱い制約だが、うまく行かないときにはさらに強化するような考えはあるか?」という質問に対して「国民が要請を守ってもらえば感染はピークアウトする」という回答で、答えていない。要するにうまく行かないことは想定していないということだと理解した。これは日本のリーダに共通の特徴だと思っている。これでは状況が刻々と変化する戦争は戦えない。
私はうまく行くかどうかは、五分五分よりもややうまく行かない可能性のほうが高いくらいだ、と思っている。その理由は今後1週間くらいの間で感染者数はかなり増えるはずであり、これまで行ってきた怪しい人を狙い撃ちで調査する「クラスター追跡」が実質的に不可能になる可能性が高いと思うからである。
安倍総理の今回の具体的方針で一番問題だと思うのは「PCR検査の能力を1万から2万に増やす」という発言である。仮に欧米のように感染爆発が起こったとすると1日に数千人の感染者が見つかる。これを把握するには1日10万人の検査能力は不可欠である。おそらく10万は実現の見通しが立たないという報告を受けているのだと想像するが、中国、韓国、ドイツ、米国ではこのレベルができているので、総理が指示を出せば、時間はかかってもいずれ実現するだろう。総理の指示がないと2万しか用意しないので、「クラスター追跡は無理」と分かった時点で動き出すことになるだろう。検査能力の向上はさらに遅れることになる。
質問側で気になったのはNHKの「緊急事態宣言は遅すぎたという声があるが・・・」という質問である。これは宣言が出る前に「早く出せ」とあおる意味で言う意味はあるが、宣言の質疑で出すべきではない。出したことに対する進め方、あるいは問題を指摘して、どうやればうまく行くかを検討するのが現時点で必要なことであり、反省は1年後に事態が収まってからゆっくり検討するべきことである。NHKはこれまで「早く出せ」とあおってもいなかったのに、質疑の場でこのような質問をする評論家意識が気に入らなかった。

これでうまく行ってくれることを祈るが、一週間後には東京都で500人、日本全体で2000人が1日に感染発覚して、クラスター追跡は不可能という事態に備えることは政府としては不可欠だと思う。

2020年4月5日日曜日

COVID-19対策の全体像を描くべき

COVID-19で日本が欧米のような悲惨な状況に陥ることは確実なように思われる。これまでの日本政府のような場当たり的な対応を続けていると欧米よりさらにひどいことになると私は感じている。これまでの安倍総理の対応は、中国人入国禁止、全国休校、マスク2枚、30万円であるがいずれも国民の人気を取るための政治パフォーマンスという印象を持っている。現在の状況は欧米のような状態にまで日本が感染拡大したときの対応策を検討しておくことで、それができていればフランス程度でフランス程度で収まるかもしれないが、対応が遅れるとスペインのようなことになると思っている。
以下、私の考える政府の対応策を書く。私の考える対応策は、まず全体像を描くことである。対応策の全体像は大きく3点からなる。
1)感染拡大の抑制
最も重要なのは感染拡大の抑制である。そのためには、感染者を特定して、隔離することである。感染者を特定できない場合は国民全員を可能な限り隔離する、これが外出禁止である。これが長く続くとあらゆる産業に影響が出るので、一刻も早く観戦者の特定の仕組みを作るべきである。そのためには検査体制を韓国並みに充実させて少しでも危ないと思えばすぐに検査ができる体制を作ることである。私は2月初めから日本の対応が良くないと書いてきたが、いまだに改善されていない。2か月前に動いていれば、外出禁止までは必要なかったかもしれないが、今では外出禁止令は不可欠で、外出禁止令を出しても韓国並みの体制を取らない限り、ほぼ永遠にそれを解くことはできないということを認識するべきである。
現在の日本の法律では、緊急事態宣言をしても外出禁止はできない、ということなので法令で罰則付きの外出禁止をできるようにするべきだろう。政府の要請だと90%、罰則付きなら99%の国民が従うだろう(経済的補償を発表した場合)。
2)感染者の扱い(治療)
メディアの報道を見ると、病院へ行けば対応できると思っているようだが、この病気には治療法は見つかっておらず、基本的に治癒には本人の体力に頼るしかない。病院ができることは体力が落ちないようにすることだと認識するべきである。軽症の人は隔離、重症の人は呼吸補助のような対応を考えるべきである。特に隔離場所は重要で家庭での待機は必ず家族に感染させるので、ホテルを借り上げるなどして隔離場所を確保することが不可欠である。医療関係者に感染させることは絶対に避けるべきなので、特別の注意を図るべきである。現在話題になっているのは「COVID-19指定感染症なので感染者は入院させないといけない」というルールがあることだがこのルールはCOVID-19に合わせて作られたものではないので、今回の特例としての対応方法を法制化するべきである。
具体的な感染者への対応が一番きちんとできているのは中国だと思う。中国の手法を参考にするべきだろう。
1)、2)は主に政府(厚労省)が対応するべきことだが、厚労省が全く機能していない、と私は感じている。官僚が過去の例や縦割りに縛られて動かないときに強制的に動かすのが政治家の役割だが、それも機能していないと思っている。
3)経済対策
経済対策では、欧州は休業補償、米国は国民への金銭配布、が対応策となっており、日本は米国型を採用しようとしている。欧州型のほうが合理的だと思うのだが、現行法の関係で欧州型は取れないのかもしれない。しかし、「外出禁止要請」では感染拡大は収まらず「外出禁止命令」にまで行かないと収まらないと思われるので、欧州型の準備を進めるべきである。これに関しては政府の意欲はあるので、それほど心配していない。

以上の3点は互いに関連しているが、順番に実施するというよりも並行して検討し、決まったことから順次実施していくべきである。そのためには3つの検討チームを作って並行して動かして、お互いに連携していくような体制が必要なのだが、現状ではそんな印象はない。総理側近にこれくらいのことを考える人は居ないのかと、暗澹たる思いである。

2020年4月2日木曜日

コロナ後を考える

COVID-19のパンデミックで世界中の人の移動が制限されている。私は日本も緊急事態宣言を出すべき時期に来ていると思っている。来週になると手遅れになるだろうと感じる。
現在のような移動制限はおそらく秋まで続くと思われる。秋になって徐々に人の移動が再開したときに、その時の社会の風景はこれまでに戻るのではなく異なった風景になるはずである。企業などはそのことを想定して動くべきだと思う。
誰でも思うのはインターネットの利用が大きく増加するだろう、ということである。外に出歩けないのでネットしか使えない状態が何か月も続くと、これまでインターネットを使わなかった人も、使わざるを得ず、「使ってみると結構便利」と言う人が続出して、社会の動きが変わるくらいの変化になると思う。日本のインターネット利用は遅れていると言われているが、コロナ後に日本の競争力がどうなるかを考えてみたい。
①日本は追いつくという見方
今、日本はインターネットの利用が進んでいない、それが使う人が増えて、先進国に追いついてくるので、日本の競争力が上がるだろう、という見方が一つできる。
②日本はさらに遅れる
日本でインターネットの利用が増えることは間違いないと思うが、他国の利用はさらに進み、むしろ差が開く、という見方もできる。

私は、残念ながらおそらく②になるだろうと思っている。それはこの期間に起こった新しい動きが、コロナが治まると日本では元に戻ってしまうだろうと思うからである。それは規制の問題である。例えば、医療行為は対面で行わないといけないことになっているが、こういう時期だからネットで医療相談を受けることができるようにしよう、というのは日本でも言われているし、おそらくほとんどの国で行われることになるだろう。
日本の場合には法律改正には至らず、パンデミックが治まると元に戻ってしまうのだが、多くの国ではそのまま新規ビジネスとして定着する、というのがありそうなことに私は感じている。日本以外の国ではビジネスモデル自体が変わってしまうのに、日本では「高齢者のネットアレルギーが減った」、程度で収まってしまいそうに思う。
これは政策による部分が大きく、企業が変えることはできなさそうなのだが、企業の立場としては今の枠組みでインターネット増加の流れにうまく乗ることと、今くいくという実績を見せることが重要だと思う。