2020年12月15日火曜日

菅政権の構造的問題が明らかになってきた

 総理になって3ヵ月、菅政権の長所も、短所も見えてきたように思う。まず長所から指摘すると、菅氏の打ち出した、方針は全体として評価できる点が多いと思う。

デジタル庁の創設、マイナンバーカードの重視、6Gへの取り組み、携帯電話料金の引き下げ、カーボンニュートラル、不妊治療のサポート、開かれたインド太平洋戦略、地銀の再編、中小企業の再編、良い着眼点のものが多いと感じている。私の専門である6Gと外交問題のインド太平洋戦略には賛成できないのだが、それらについては別の機会に述べることにしたい。

その一方でコロナ対策で、GoTo事業にこだわりすぎて、感染が拡大し支持率は下がっている。私はこれは単なる判断の誤りではなく、菅総理自身の国を動かす手法の問題から来ていると思っている。以前書いたように菅総理の手法はマイクロマネージメントと人事権を背景にした脅しによる突破だと思っている。この感触はこの3ヵ月で強くなった。

整理すると、菅総理の国の課題と改良点に関する着眼点はなかなか良く、本人もそれに自信を持っている。そして、官僚の抵抗を排除して実行させることが、重要だと考えている、ということである。しかし、彼の着眼点は具体的すぎて、もっと現場が考えるべき内容である。このように具体的な眼に見える点にトップの眼が行きすぎるのがマイクロマネージメントである。例えば「携帯電話料金が高い」というのは総理が言うべきことではなく、「元国営だった事業が民営化して十分に競争環境ができているか」が総理が考えるべきことだと思う。

この手法の問題点は官僚が考えなくなる点である。総理の指示が具体的で、強い強制力を持つので、命令を実行することについてはエネルギーを注ぐが、自ら解決策を考えようとはしない。コロナ感染対策では、感染を止めようとすると経済活動が低下し、経済を回そうとすると感染が拡大するという難しい問題である。このような問題に関しては総理から具体的な指示があるまでは官僚は動こうとしない。大臣ですらその傾向があると私は感じている。

本来なら、「経済も回したいし、感染も抑えたい。何か良い方法は無いか?」と官僚に問いかけ、官僚から様々なアイデアが出て、良さそうなものを実行するのが本来の筋であるのだが、現在は総理と官僚の間に信頼関係は無く、総理の側近がアイデアを出さないと前に進まない、というのが私の受けている印象である。おそらく総理の側にも、官僚の側にも相手に対する不信感ができており、改善は難しいように思う。官僚は層も厚く、優秀な人もたくさんいる。官僚から様々な提言が出るようにするのが総理の重要な仕事だと思う。

この種の問題はマイクロマネージメントの必然の帰結である。大きな組織ではそれを避けるようにするのがトップの重要な心構えだと思うのだが、日本ではそれを指摘する人が殆どいないのが残念である。