2020年7月6日月曜日

藤井聡太の強さは想像以上

最年少で将棋のタイトル戦に挑戦している藤井聡太七段の強さに目を見張る思いでいる。かなり前から最年少挑戦者の期待が高まっていたのだが、コロナ禍でプロの対局が全面中止となり、最年少挑戦は無理かと言われ始めた。日本将棋連盟は緊急事態宣言が解けるとさっそく藤井七段の挑戦の可能性がある棋聖戦の対局を組み、「勝てば最年少挑戦者」となれるように日程を組んだ。但し、相手はタイトル保持者の永瀬2冠、容易ではないと思われたが藤井七段は見事に勝って挑戦権を獲得した。相手は現在最強と言われる渡辺3冠である。現在挑戦手合いが進行中であるがその間に藤井七段は王位戦への挑戦も決め、現在ダブルタイトル戦を戦っている。
実はここまでは私にとっては想定の範囲内だった。勢いのある藤井七段が挑戦者になるとこはかなりの確率であると思っていた。私にとっての驚きはタイトル戦の内容である。棋聖戦の第2局で、渡辺3冠に勝って2連勝となったのだが、私はこの対局の棋譜を仕事をしながら見ていた。動画の中継では無く、指し手で記者が将棋の盤面を動かすインターネット中継である。プロのタイトル戦はNHK杯などと違って時間がたっぷりあるのでなかなか進行しない。仕事をしながら、「パチリ」と指した音がすると将棋の画面を開く、という見方である。その中で58手目の「3一銀打ち」という手が驚きだった。
私は囲碁には自信があるが将棋はそれほど強くないので「どちらが優勢か」などはほとんどわからない。しかし、インターネット中継では、別室で多くのプロが集まって検討している状況を記者が教えてくれるので大体の状況が掴める。この「3一銀打ち」が指された時、この手を検討していたプロは誰もおらず、その手が指された時には「そんなところに行ったの」という反応だったようである。しかし、しばらくして局面が進んでみると「あの手は素晴らしい手だったようだ」という評価に代わっていった。翌日にはアマチュアの強豪がAIにかけたところ、5億手まで読む設定では「3一銀打ち」を発見できず別の手を最善手としていたのだが、6億手まで読みを深めると「3一銀打ち」を最善手として発見したそうである。
このことは、藤井聡太が既にプロ将棋界の第一任者になっていることを表しているように思われる。過去の羽生善治永世名人などでも初めて挑戦したときには、トップ棋士に並んで勝ったり負けたりする状態だったのが、2年くらいの内に抜け出してめったに負けないという状態になっていったのだが、藤井聡太は昨年既にトップと並ぶ実力があり、今は既にトッププロの中でも頭一つ抜け出した実力を持っているように感じられる。
囲碁の世界では20歳の芝野名人が昨年の秋に初めて挑戦手合いに登場してから3つのタイトル戦に立て続けに勝利して、3冠になっている。しかし、棋譜を見る限り、芝野名人が頭一つ抜け出している感じはせず、勝負強さで勝っている感じがしている。藤井聡太の強さはそれを上回る大変なものだという感じがしている。

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