自民党総裁選挙に続いて総理大臣指名選挙が行われ、高市早苗氏が総理大臣になった。少数与党で、公明党から維新の会へと組み換えがあったので今後の運営も容易ではないだろうが、現時点での支持率高いようである。ここでは高市総理に何を期待できるかについての私なりの見方を述べてみたい。
総理大臣に重要な資質として私はビジョンと実行力があると思っている。高市氏はビジョンはあまり得意ではないが実行力は高い人だと思っている。菅義偉元総理と似たタイプの人だと思う。それでビジョンは安倍晋三元総理のものを借用して、安倍氏が実現できなかったことを実現しようとしているように思う。
所信表明演説では日本の経済力の強化を中心に語っていたと思うが、この点に関してはあまり期待していない。高市氏はアベノミクスを継承するといっている。アベノミクスは3本の矢、第1の矢である金融緩和、第2の矢である財政出動、第3の矢である成長戦略からなっている。私は安倍政権の最初の3年は第1の矢と第2の矢の効果で日本経済を上向かせたが、第3の矢の具体策が乏しかったので後半の3年は息切れしたと思っている。そして高市氏も同様で第3の矢の具体的な持っていないと思う。高市氏もそれを認識していると見えて「日本成長戦略会議」を立ち上げるといっている。しかしそこで強調されているのは危機管理投資であり、これはいわば保険である。成長力の低い企業が保険を強化したとしてもそれで成長できるとは思えない。株式市場はいわゆる高市トレードで上昇しているが、私が国力の本質であると考えている国際競争力の強化にはつながらないので、たとえ一時的に政府支出で好景気になったとしても長続きはしないと思っている。
高市氏の外交能力はまだ分かっていないが、私は高市外交に関しては期待している。それは日本が真の独立国に近付くことである。現在の日本は世界政治の中でいうと、米国派閥の一員で派閥の長である米国に対してあまりものが言えない国だと思われていると思う。しかし、Gゼロの時代になって、米国が、派閥メンバーを保護はしないがいうことはきかせたい、という態度になっている。そこで米国の言うことを聞きながら、徐々に米国からの距離を取り、自分の立場を主張できる国にしていく、というのが日本の政治的観点から進むべき方法性だと思う。
これは安倍元総理の構想だと思う。高市氏は安倍氏に比べてビジョン面で劣るので、個人として世界の首脳から安倍氏よりも高い評価を得ることは至難であると思うが、安倍氏の考えを受け継ぐので安心感はある。その一方で米国が世界から嫌われるようになってきているのは日本が独立を目指すうえでは大きなメリットである。結果として、日本の存在感は上がると期待している。
現実的には、維新との約束がうまくいかずに来年中ごろに解散総選挙になる可能性が高いと思っている。その時に大負けするのは自民ではなく、立憲民主党で、その議席がどの党に移るのかに注目したい。