2020年8月4日火曜日

自治体システムの統一は日本の長期低落傾向の歯止めになるかも

政府は自治体のITシステムの統一に乗り出すと報じられている。これは定額給付金の配布でマイナンバーを使って管理しようとしたが、自治体のシステムがバラバラでほとんど機能しなかった反省に基づいているという。私はこれは、うまくいけば先日紹介した日本の国際競争力が年々低下していることの歯止めになるかもしれないと言えるくらいの大きな話だと考えている。
以前にも書いたが、日本の長期低落の大きな理由はソフトウェア開発力の低さだと考えている。ここでいうソフトウェア開発力とは決まったアルゴリズムを実現するプログラム力ではなく、将来変わるかもしれない目標に、少しの手入れで対応できるように柔軟性を持たせたソフトウェア開発のことである。日本ではこの種の教育が決定的に欠けており、日本人技術者の能力が低いと考えている。
今回の自治体システムの統一でいうと、まず現状で各自治体がバラバラの作りをしており、皆自分のシステムを変えたくない。8割は共通の業務でも2割は異なっており、皆が納得するような機能を洗い出して整理するのは大変である。頭ごなしに一部の人が決めたシステムを押し付けると大きな反発を招く。日本人はこの種の整理やまとめもうまくないが、もっと大きな問題は出来上がった後の問題である。
この種のシステムは出来上がるまでに何年もかかかるが、完成したころには世界のシステムは先に進んでいる。エストニアの電子政府などは現時点で日本がこれから作るシステムよりも進んでいると思うが、出来上がる頃には更に進んだものになる。世の中のDXの進歩を見ればそれは確実である。このような現時点では見通せない将来の変化に対して、少しの手直しで対応できるように作る能力は日本人には極めて低く、また一から作り直すことになりそうである。この点を乗り越えることができれば、日本の長期低落傾向は止まると思うのだが、実際にそのようなシステムが作れるかと言うとかなり怪しい。
私はこのニュースを見た時、「誰が要求条件を作るのだろう?」「総務省にはできそうにないな」と思っていた。今日の新聞によると内閣府のCIOオフィスが司令塔になるようである。これならば人材をうまく集めればうまくいく可能性はある。しかし、現在のCIOは建設業界の大林組から来た人だそうで、それではこのシステム開発の指揮を取るのはまず無理ではないかと思っている。
現実には自治体の反発があって話が流れてしまう、というのが一番ありそうな話に思うが、ここは日本の将来のために極めて重要なところなのでぜひ日本の英知を集めて基本設計をしっかりやってほしいと思っている。

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