国会で日本学術会議の在り方の見直しが承認され、政府直営から独立行政法人に変更になった。政府が活動費を支給する代わりに、評価、監査は内閣府が任命した第3者機関が行うという。これをもって政府の介入を危惧する人もいるが、まずは学術会議が何をするか、第3者機関がどう評価するかを見守りたいと思う。全体としては良い方向への評価だと思う。
言うまでもなく、今回の変更のきっかけは菅義偉元総理がこれまでは認めてきた学術会議メンバーの推薦に対して拒否権を発動した点にある。結果として学術会議の在り方の見直しと、菅氏辞任の理由の一つになったと思う。
日本学術会議は元々は日本の科学技術の在り方について著名な学者が集まって政府に対して提言を行う機関だったが、次第に人文系の学者の発言が強くなり、内容が変質してきた印象を私は持っていた。特に「戦争反対」を金科玉条のように唱えて現実離れしてきた印象を私は持っている。戦争賛成を唱える人は居ない。その一方でプーチン大統領のように隣国に侵略戦争を仕掛ける人物が世界で存在感を持っておりこれを世界は止めることができていない。これを止めるには「戦争反対」を声高に叫ぶだけでは解決しないのは明らかである。しかし、学術会議は現実的な解を探るのではなく、今でも自衛隊不要論を唱えているような印象を私は持っていた。
菅義偉元総理が何人かの学術会議メンバーの任命承認拒否を行ったのは心情的には私にも理解できる。しかし、承認拒否の理由を問われて「人事の問題だから」と回答したことに私は強い不満を持っている。マスコミも野党も「人事の問題には理由を説明せずに恣意的に決定してよいのか」という突っ込みを入れていない。ここに私はこれまで述べてきた「日本経済の凋落が止まらない」の原因を見ている。つまり、「人事の問題は微妙な問題なので説明しなくてよい」という暗黙の社会の認識を感じている。こういった態度が日本のイノベーションの強化を阻んでいると思う。
今後の学術会議がうまくいくかどうかも、第3者機関と学術会議のやり取りが、説明責任をもって行われるか、暗黙の圧力で行われるかといった点が鍵になると思う。
政府が日本学術会議に不満を持ったからかどうかは分からないが、日本学術会議の機能は総合科学技術会議と重なっているように見え、最近は総合科学技術会議のほうが重視される方向に見える。どちらも学会の重鎮が仕切っているはずなので、統合の話などが学者側から出ても良いと思うが、果たしてどうなるか、今後の推移を見守りたい。