2020年9月7日月曜日

日本人はプログラムは書けるがソフトウェア開発は不得意

 私は日本のソフトウェア開発力が低いと何度も書いてきた。これは政府でも認識されているようで小学校からプログラミングの授業を導入すると言われている。プログラミングはソフトウェア開発の重要な要素なので子供の頃から教えることで一定の効果はあると思うが、それでは問題は解決しないと私は思っている。私は日本人のプログラミング能力は低くないと思う。

ではなぜ、日本人のソフトウェア開発力が低いのか、事例を挙げて説明してみよう。私が大学に勤めていた頃、定期的に自分が主催で講演会を開催していた。講演会のたびにアンケートを取りその結果を将来の講演会の参考にしていた。100枚くらいのアンケート用紙を学生に渡して「これを分析するソフトを作ってほしい」と言えば、ある程度ソフトウェアを勉強した学生なら簡単に作る。こういう仕事は日本人は決して不得意ではなく、むしろ得意かもしれない。

ところが、「講演会は何度も開催するのでそのたびに分析する必要がある。全体として分析の手間を最小にするプログラムを作ってほしい」というと、学生は困ってしまう。将来、どんな講演会を開催するかは決まっていないし、単独公演の場合も、シンポジウムも、パネルディスカッションもある。これを作るためには「講演会とは何か」を考えて抽象化する必要がある。決まっていないことをあれこれ悩んでも仕方がないのだが、このようなことをまず考えて、自分なりに整理してから取り掛かると、出来栄えが違ってくると思う。日本人は小学校から高校までこの種の教育は全く受けていないし、大学でも殆どこの種の教育は行われていない。しかし、留学生と話すとこの種の問題に対して手応えのある反応が返ってくることが多いと私は感じている。

言うまでもないことだが、ソフトウェアの特徴は製造コストがゼロで開発コストが殆ど全てだという点である。従って将来を見据えて開発コストを抑えた開発を最初から考えることは重要である。日本人のプログラミングは「ハードウェア開発の感覚で作るソフトウェア」だと感じている。先日、「自治体のシステムを統一する」という政府の動きについて書いたが、ここでも「うまく作れない気がする」という私の懸念はこの「ハードウェア感覚で作るソフトウェア」という点から来ている。

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