今日は大晦日、本年最終日に私が今年後半に感じた日本経済の現実的将来像を描いてみようと思う。
岸田総理は、新しい資本主義とか、賃上げ要請とか、色々やっているがこれらは一時的効果はあっても年単位で見ると効果はなく、むしろマイナスになることが多いと思う。その理由は競争原理に照らして、日本企業の競争力を奪う方向性だからである。政府に期待して日本経済が上向くことはあきらめたほうが良いと思う。日銀は経済が上向かないので、たとえ総裁が変わっても今後も金融緩和を続けると思っている。
その結果起こることは円の価値が下がる円安である。一時一ドル150円まで行った円安は、米国の利上げが止まりそうだということで135円くらいまで戻ってきた。来年末から再来年にかけては米国は利下げに転じるだろうから、一時的には120円くらいまで行くかもしれないが、落ち着きどころは130円くらいだと思っている。その後も日銀が金融緩和を続けると再び円安方向に向かうと思っている。その理由は通貨供給量の違いである。米国は利上げと同時に量的引き締め(QT)を行っている。これは景気が悪い時に民間の債権などを買って市場にドルを供給したものを売って、ドル供給量を正常に戻す操作で、景気が悪くなりすぎなければ行うことはないだろう。継続的金融緩和を行っている日銀とは大きな違いである。
円安になるとどうなるか? 日本人の平均給与は下がり、日本の物価もドルベースでみれば下がる。つまり「日本はモノが安い国」という見方が定着する。その結果、中国などに移転した日本の工場は日本に戻ってくる。日用品などの単純な組み立て作業の工場は東南アジアや、南アジアのさらに給与の安い国に移転するだろうが、製造ノウハウが大きな製品の工場は日本に戻ってくると思う。具体的には機械系の製品や新素材の工場などである。特にカスタマイズ要求の大きいB2Bの製品は日本の工場で作るのが適している。
日本企業だけでなく外国企業の工場も日本に作られることが予想される。キャタピラーやシーメンスの工場が日本にできてもおかしくない。それだけではなく、後継者不足に悩む日本の中小の工場で優秀なところは外資に買収されて、優良企業に生まれ変わるところも出てくるだろう。このようにして日本の製造業が復活して日本経済が上向く、というのが私が考える日本経済の将来シナリオである。
日本経済が上向くほどには日本人の収入は増えない。それは収入の多い幹部は日本人以外が多く、日本人は中堅以下の現場の労働者が多くなるからである。日本企業でも武田薬品や三菱化学など外国人が社長になる企業がちらほら出ているが、これも増えてくると思っている。そのほうが業績が上がると思うからである。すでに東大卒の就職先では外資系企業が増えており、優秀な人材は外資系企業に向かう傾向が見えている。
これは幼稚園から大学まで日本の教育は「周囲に合わせることのできる優秀な人材」を育成することを目標としており、個性を生かす教育になっていないからである。つまり日本の教育は工場労働者を育成するのに適した教育である。日本の教育で決断を求められる場面は非常に少なく、幹部の条件である決断力を育成するには適していない。これは昨日書いた江戸時代以降、現代まで続く為政者の方針がそうであったからだと思っている。この点も時間をかけてゆっくり変わってくるだろうが、私の生きているであろう今後20年では多きな変化は起きないと思っている。
このシナリオでは日本経済が回復するとはいえ、日本人の平均収入は少なく、決して経済復活とは言えないと思う読者も少なくないだろう。しかし、私はこのシナリオが今後20年で現実的に起こりそうなシナリオのなかでかなり良いほうだと思っており、これより悪いシナリオはいくらでもありそうだが、これより良いシナリオは現実味の薄いものになると思っている。
さらに台湾をめぐる戦争などが勃発すると経済自体の優先度が下がる。その場合にどうなるかは私には想像できない。
これをもって私の本ブログの2022年の締めとしたい。皆さま、よいお年を!
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