菅政権が成立して1か月が経過した。まだ成果はそれほど見えないものの、菅総理のやり方はかなり見えてきたように感じている。メディアでもいろいろ言われているが、私の感じ方は少し違うようなので、ここで整理しておきたい。
・菅総理のやり方はマイクロマネージメント
囲碁には「着眼大局、着手小局」という言葉がある。全体を見渡して方向性を決め、具体的な打ち手は細かい読みを積み重ねて決めるべきだ、という意味である。菅総理は、着眼はあまり気にしておらず、着手をどうするかが政策の殆ど全て、という印象である。
例えば「携帯電話の料金を安くする」という話が政策の目玉とされているが、本来は事業者間の競争を促して、イノベーションを起こして、結果として携帯電話料金が割安になる、というのが政策だと思うのだが、菅総理は直接「携帯電話の料金を安くする」ことを求めている。分かりやすいし結果も出やすいと思うがやり方によっては日本経済の底上げにつながるかどうかは不明である。
地銀の統合や中小企業の統合も同様で、具体的アクションであり、できたかどうかがはっきりわかる目標である。会社で言えば方向性を示す社長というよりも、具体的なコストダウンの手法を示す社長、という感じである。
これに対して「デジタル庁」の設立は少し性格が異なっている。デジタル庁を設立したからといって日本のDXが進むとは限らない。本来は「日本のDXをどう推進するか」、がデジタル庁の目標となるはずだが、それでは具体的な動き方が分からないので「官庁のバラバラのITシステムを統合する」という具体的に動ける目標にしたのは菅総理らしいと感じている。しかし、前回も書いたが、これを実行するのは非常に難しい。一つは官僚が既得権を手放すかどうか、という点で、手放させるためには、平井大臣ではなく、菅総理自身が音頭を取る必要があると私は思っている。権限をデジタル庁に集中させたとしてもまともな要求条件を整理できるかも非常に難しく、この点に関しては私は悲観的である。
全体として菅総理の打ち出す方向性は分かりやすく、大きく国を動かすことは無いが、それなりの効果は生むだろうと思っている。
・強引な人事は菅政権の本質
ネガティブな面として学術会議の人事に現れた「脅しの手法」がある。この問題は前回私が期待したように連日メディアで取り上げられており、収束の気配は見えない。「学術会議メンバーは公務員である」とか「そもそも学術会議のあり方は現状で良いのか」などと論点をそらそうとして色々言っているが、納得できる話ではない。「私の気に入らない行動をとる人物は排除する」というのが菅総理の権力の最も重要な部分になっているので「6人を排除したことを取り消しもしないし、説明もしない」という点は決して譲らないだろうと予想している。それで良いわけではなく、良くないと思うのだが譲ってしまえば総理を続けられなくなるだろうと思っている。
企業では人事権を持つのは社長である。「人事は説明しない」というのが日本社会の特徴だが、それでも社員から見て納得性のある人事と、納得性のない人事とがある。納得性のある人事をするのが普通だが、たまに納得性のない人事を平気でする社長がいる。社長本人が優秀ならそれでも業績は向上するが、社長が交代した後で会社がガタガタになる。社員の士気が下がるからである。私は、菅政権に関して、この点を大いに気にしている。
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