2021年2月12日金曜日

「サピエンス全史」を読んだ

 久々のブログ更新だが、この間にユヴァル・ノア・ハラリの「サピエンス全史」を読んだ。実は私は最近は殆ど書籍はKindle版を買っているのだが、図書券をもらったので、「何かしっかりした本を買おう」と思ってこの本を選んだ。ご存知の方も多いと思うが米国のオバマ元大統領が絶賛していた本である。

読み始めてみるとホモ・サピエンスと呼ばれる人類がどのように類人猿から分かれてきたか、ネアンデルタール人のようなホモ・サピエンスではない化石人類からどのように分かれてきたか、そしてどうして地球上で圧倒的な力を持つ種に育ってきたかを書いている。「前の京大総長の山極寿一氏でもこの程度は書けるのではないか」などと思いつつ読んでいたが、読み進むうちに「やはりこの人は生物学者ではなく歴史家だ」と思うようになった。

ハラリ氏によると、人間が他の生物よりも圧倒的に強くなったのは「妄想を多くの人が共有できるようになったからだ」という。ここでいう妄想には実在しない人間が作り上げた概念全てが含まれる。国家、宗教、貨幣、企業など現在我々が当然存在していると考えているものも全て妄想の産物だという。ニュートンやアインシュタインの法則も妄想である。言われてみればその通りである。そして妄想がサピエンスをなぜここまで強くしたかというと、きわめて多くの個体が同じ妄想による概念を共有することにより協力することが可能になったからだという。ホモ・サピエンス以前の生物でも共同作業をすることはあるが、その範囲は同じ場所にいる個体間に限られる。しかし、サピエンスの協力関係ははるかに大規模であり、それが道具の発明から科学技術の発展、国家の発展、民主主義の発展などにつながったという。

著者は宗教、科学、社会制度などあらゆる社会の仕組みの発展を端的な言葉で解説しているが、私にとって印象的だったのは仏教の解説で「この人はかなり深く仏教を理解している」と感じた。将来に向けてサピエンスの妄想による発展は一層加速しており、将来は遺伝子操作による新種の人類、再生医療技術、体の一部を機械で置き換えるサーボーグ化、更に頭脳さえもAIによって進化を遂げ、不老不死を手にするかもしれない、として「それは果たして幸福につながるのか」と疑問を投げかけている。

私にとってこれまで触れたことのなかった世界観であり、新鮮味があった。時間に余裕のある方には一読を勧めたい。ただ、将来への見通しにはしっくりこない部分もあったが・・

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